「今は使ってないですよね?」温泉宿でドライヤーを荷物でキープする女性。待っていた客が言葉を失った理由
空いているはずの一台が使えなかった
連休に泊まった温泉宿でのことです。大浴場から上がって脱衣所へ戻ると、鏡の前には備えつけのドライヤーが二台ありました。
一台は女性が使っていました。ところが、もう一台の前にもその人の服や大きな紙袋が広げられ、椅子までふさがっています。
後ろでは、髪をぬらしたまま二人ほどが待っていました。私もタオルで髪を押さえながら、その近くに立ちました。
しばらくすると、先に待っていた人が女性に声をかけました。
「すみません。こっちのドライヤー、使ってもいいですか?」
女性は鏡越しにちらりと振り返りました。
「あ、それまだ使うから」
「でも、今は使ってないですよね?」
少し戸惑いながら聞き返すと、女性は手を止めました。
「あとで連れが使うんです。荷物も置いてるし」
そう言われると、声をかけた人もそれ以上は言えなかったようです。
空いているドライヤーが目の前にあるのに、誰も使えない。待っている人たちは顔を見合わせるだけでした。
廊下で、宿の人に声をかけた
私はその場で言い合いになるのも嫌で、髪を十分に乾かせないまま脱衣所を出ました。
客室へ戻る途中、廊下で宿の方とすれ違いました。一度はそのまま通り過ぎましたが、やはり気になって振り返りました。
「すみません、大浴場のことでちょっといいですか」
「はい。どうされましたか?」
「ドライヤーを使っている方が、隣の一台の前にも荷物を置いていて……。ほかのお客さんが待っているんです」
宿の方は少し驚いたように聞き返しました。
「もう一台は、今は使われていないんですね?」
「はい。使っていいか聞いた方もいたんですけど、『あとで使うから』と言われてしまって」
「分かりました。こちらで確認しますね」
宿の方はそう答え、脱衣所のほうへ向かいました。
私も部屋へ戻ろうとしたところで、タオルを脱衣所に置いてきたことに気づきました。来た道を引き返し、戸の近くまで来ると、中から宿の方の声が聞こえてきました。
「お客様、恐れ入ります。こちらのドライヤーをお使いでないようでしたら、お荷物を移していただけますか?」
少し間がありました。
「あとで使おうと思ってたんですけど」
「ほかのお客様もお待ちですので、ご協力をお願いいたします」
女性は何か言いかけましたが、結局、隣の椅子に置いていた荷物をまとめました。
「どうぞ」
待っていた人が小さく頭を下げ、ようやく空いたドライヤーを手に取ります。
大きな騒ぎになったわけではありません。ただ、使っていないものまで「あとで使うから」と押さえてしまえば、周りは困ってしまいます。
宿の方が淡々と声をかけてくれたことで、張りつめていた脱衣所の空気もようやく落ち着いたように感じました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














