「私の育て方は間違ってないから」疎遠だった母。だが、結婚式でのベールダウン時の母の言葉に唖然
予定になかったベールダウン
母とは長いこと、必要なこと以外はほとんど話していなかった。
結婚式でも、ベールダウンはしないと式場には前もって伝えていた。
式の日取りが決まってからも、母から連絡が来たのは数えるほどだった。
それでも当日の朝、控室の前で親戚と話している母を見たときは、何事もなく終わればいいと思っていた。
ところが入場直前、母が控室へ入ってきた。
「親戚にも聞かれたし、やっぱり私がベールダウンしたほうがいいでしょう」
介添えの女性が進行表を確認しながら、困ったように私を見た。
「お時間が迫っていますが、新婦さま、どうなさいますか」
扉の向こうには、すでに参列者が座っている。ここで母と言い合うほうが式に影響する気がして、私は短く答えた。
「……お願いします」
母がなぜそこまでベールダウンにこだわったのか、その場では聞かなかった。
入場すると、私は母の前で腰を落とした。会場は静かで、椅子がわずかにきしむ音まで聞こえた。
母の手がベールに伸びる。
母が口にした言葉
「あんたは昔から、本当に言うことを聞かなかった」
予想していなかった言葉に、私は顔を上げられなかった。
母はベールの端を持ったまま続けた。
「こんなふうになるとは思ってなかった」
参列者にも聞こえる声だった。
何のことを言っているのか聞き返したかった。でも式の途中で、私は母の前に腰を落としたままだった。
少し間を置いて、母が言った。
「でも、私の育て方は間違ってないから」
誰も声を出さなかった。
数十人が座っているはずなのに、会場から音だけが消えたようだった。腰を落としたまま、私はその静けさを聞いていた。
介添えの女性が私の背中にそっと手を添えた。
「このまま進めますね」
私は小さくうなずいた。
ベールが下りると、母はそのまま自分の席へ戻った。
式は、そのまま続いた
私は立ち上がり、新郎の隣へ向かった。
少し遅れて拍手が起こり、止まっていた空気がようやく動き始めた。
隣に並ぶと、新郎が私の手を握った。
「大丈夫?」
私はすぐには答えられなかった。
「……あとで話す」
それだけ伝えると、式は誓いの言葉へ進んだ。
母が何を思ってあの言葉を口にしたのか、今でも分からない。親戚の目が気になってベールダウンを申し出たのか、それとも以前から言いたかったことがあったのか。それを確かめることもしなかった。
ただ、母が「私の育て方は間違ってない」と二度繰り返した声と、その直後に会場を包んだ静けさだけは、今でもはっきり覚えている。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














