「昼はいつもコンビニのパンだね」休憩時間をずらしても現れた同僚。だが、上司に相談した結果
時間をずらしても、昼になると同じ顔が立っていた
前の職場に、同じ部署の四十代の男性社員がいた。
仕事で必要なこと以外、ほとんど話したことのない相手だった。
それがある時期から、昼休みになると私の席へ来るようになった。
最初は正午だった。
コンビニで買ったパンを袋から出したところで、机の横から声がした。
「昼はいつもコンビニのパンだね」
「ああ…安いし、楽なんで」
そう答えると、男性は「ふうん」と笑って自分の席へ戻っていった。
そのときは、それだけだった。
ところが翌日も、パンの袋を開けたところで同じ言葉をかけられた。
「今日もそれなんだ」
「まあ、だいたいこんな感じです」
笑って返しながらも、私は少し気になった。そこで翌日は休憩を十二時半にずらした。
すると今度は、食べ始めて間もなく男性がやってきた。
「昼はいつもコンビニのパンだね」
また同じ言葉だった。
次の週には一時まで遅らせてみた。それでも袋を開けるころになると、いつの間にか横に立っている。
「昼はいつもコンビニのパンだね」
三度目に同じ言葉を聞いたときは、さすがに笑えなかった。
さらに別の日には、袋の中を見ながら言われた。
「あれ、この前よく買ってた弁当は?」
「…最近は買ってないです」
「そうなんだ。昨日は○○さんと食べてたよね」
職場にいれば見えることばかりだった。それでも、自分では覚えていないようなことまで毎回口にされると、だんだん落ち着かなくなった。
「今日は早かったね」と出社時間を言われたり、帰り際に「もう帰るの?」と声をかけられたりすることもあった。
私は気になった日だけ、日付と時刻、言われたことを手帳の後ろに書くようになった。
翌週の月曜、島の並びが変わっていた
上司に相談したのは、有給を取った翌日のことだった。
会議室で向かい合い、手帳を見ながらまとめた紙を差し出した。
「ちょっと相談したいことがあって…」
「どうしました?」
「この人に声をかけられた日時です。最初は気にしてなかったんですけど、休憩時間をずらしても来るようになって」
上司は紙に目を落とした。
「こんなにあるんですか」
「はい。私が気にしすぎなのかとも思ったんですけど…正直、最近ちょっと怖くなってきて」
口に出すと、自分でも思っていた以上に声が小さくなった。
上司はしばらく紙を見てから、顔を上げた。
「わかりました。少なくとも、休憩時間まで落ち着かない状態はよくないですね」
「すみません。大ごとにしたいわけじゃないんです」
「大丈夫です。まず席の配置を少し変えます。様子を見て、それでも続くようならまた教えてください」
翌週の月曜、部署の席順が変わっていた。
私と男性の席のあいだには別の社員が入り、男性がこちらへ来るには一度通路へ出なければならない配置になっていた。
正午になった。
私は少し身構えながらパンの袋を開けた。
けれど、いつもの足音は近づいてこなかった。
隣の社員が立ち上がりながら、こちらを見た。
「昼、行ってきます」
「あ、いってらっしゃい」
それだけの、ごく普通のやり取りだった。
男性はその後、仕事で必要なとき以外はこちらへ来なくなった。廊下ですれ違えば会釈をする。それくらいの距離に戻った。
昼になるたび周囲を気にしていた時期が終わり、私はまた、自分の好きな時間にパンの袋を開けられるようになった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














