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2026.09.09(Wed)

「説明が足りなかったんじゃないの?」ドリンクバーで客と食い違っていた質問。最後まで納得できなかったワケ

「説明が足りなかったんじゃないの?」ドリンクバーで客と食い違っていた質問。最後まで納得できなかったワケ

抽出の音が終わるまでの、短いやりとり

そのファミリーレストランでアルバイトを始めて、三年目の夜だった。

ドリンクバーの機械は古く、コーヒーが落ちきるまで二十秒ほどかかる。

その音の長さにも、すっかり慣れていた。

七十代くらいの女性客が、機械の前で私を呼んだ。

「ねえ、これって、ここ押せばいいの?」

「はい。カップを置いて、この真ん中のボタンです」

「濃さも選べるの?」

「選べますよ。今は真ん中になっています。濃いほうがよければ、こっちです」

「ああ、そうなのね。ありがとう」

女性がボタンを押すと、機械が低い音を立ててコーヒーを落とし始めた。

私はそれを確認して、次のテーブルへ向かった。連れの男性は少し離れたところで待っていた。

それからしばらくして、閉店まで一時間を切ったころだった。皿を下げていると、同じ女性にもう一度呼び止められた。

「私、さっき聞いたわよね?」

女性はドリンクバーの前で、少し険しい顔をしていた。

「ちょっと。氷、ここから取るんじゃなかったの?」

指さした先を見て、私は一瞬言葉に詰まった。

そこは飲み残しや氷を流すための受け皿だった。

「あ…そこは、飲み残しを流すところなんです。氷はこちらです」

私は横にあるストッカーの蓋を開けた。中には氷が入り、トングも置かれている。

すると女性は、納得できないように眉を寄せた。

「でも私、あなたに聞いたじゃない」

「え?」

「さっきよ。氷はどうするのって聞いたでしょう?」

私は朝からのやりとりを思い返した。

「すみません。私が聞かれたのは、コーヒーの入れ方と濃さのことだったと思います」

「そんなはずないわよ。私、ちゃんと聞いたもの」

女性の声が少し大きくなった。

そこへ連れの男性も近づいてきた。

「説明が足りなかったんじゃないの?」

責めるように言われ、私もさすがに黙ってはいられなかった。

「コーヒーについてはご案内しました。でも、氷のことは聞かれていません。聞かれていたら、こちらをご案内しています」

自分でも少し強く言ったと思った。ただ、声だけは大きくしないようにした。

女性はストッカーの中をのぞき込み、少し黙った。

「…じゃあ、ここから取ればいいのね」

「はい。こちらのトングを使ってください」

男性もそれ以上は何も言わず、手にしていた伝票へ目を落とした。

女性がトングを持ち上げると、氷がグラスの中に落ちた。

カラン、と店内に音が響いた。

そのあと二人は会計を済ませ、そのまま店を出ていった。謝罪があったわけでも、こちらが納得できる言葉をもらえたわけでもない。

私はドリンクバーへ戻り、受け皿に残っていた氷を流した。

少し離れたところで、またコーヒーの抽出音が始まった。いつもなら気にも留めない音なのに、その夜だけは妙に長く聞こえた。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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