「そんなに邪魔になってます?」運動会の最前列に座り続けた父親。振り返った瞬間、表情が変わった
最前列に、一枚だけシートが広がっていた
秋の運動会の日、私は上の子の応援で園を訪れていました。
事前にもらった案内には、観覧場所の確保はせず、最前列では立って見るように書かれていました。
前にいる人が競技を見終えたら少し場所を譲るなど、できるだけ多くの保護者が見られるようにするためです。
ところが会場に入ると、最前列の中央付近に一枚のレジャーシートが広がっていました。
その上には父親が座り、横にはカメラバッグや手荷物が置かれています。父親一人の幅よりも広く場所を使っているため、その後ろには保護者が少しずつたまり始めていました。
しばらくすると、近くにいた先生が声をかけました。
「すみません。ここは立ち見の場所なので、シートをたたんでいただけますか?」
父親は振り返り、少し意外そうな顔をしました。
「え、ダメなんですか?早めに来たので、ここで待ってたんですけど」
「観覧していただくのは大丈夫なんです。ただ、人が増えてきたので、少し詰めたいんです」
「もうすぐ、うちの子の出番なんですよ」
父親はそう言うと、再び前を向きました。
「これが終わったら片づけますから」
競技が始まっても、父親はシートに座ったままカメラを構えていました。
後ろにはさらに人が増え、空いている隙間を探して左右へ移動する人もいます。
競技の合間に、先生がもう一度やってきました。
「すみません。後ろにも人が増えてきているので、やっぱりシートだけお願いできますか?」
父親は少し困ったようにカメラを下ろしました。
「これが終わったら片づけますから。あと少しだけじゃダメですか?」
「できれば今お願いしたくて……。皆さん同じように立って待っていただいているので」
父親は納得しきれない様子でしたが、「分かりました」とは言わず、そのまま座っていました。
先生もそこで言い争うことはせず、いったん離れていきました。
振り返った父親の表情が変わった
その後も人は増え、父親の後ろには何列もの保護者が並ぶようになりました。
しばらくして、先生が3度目に父親のところへ来ました。
「何度もすみません。こちら、そろそろ片づけていただけますか?」
父親は少し眉を寄せました。
「そんなに邪魔になってます?」
責められていることに納得できない、というような口調でした。
先生は声を強めず、「ちょっと後ろを見てもらえますか」とだけ言いました。
父親が振り返ります。
すると、自分のすぐ後ろだけではなく、そのさらに後ろまで保護者が並んでいました。シートの横を避けるように立っている人もいます。
父親は数秒黙ったあと、先ほどまでとは違う表情になりました。
「あ……こんなにいたんですね」
そしてカメラを置き、シートの端をつかみました。
「すみません。前ばっかり見てて、気づいてませんでした」
シートをたたんでバッグにしまい、荷物を足元にまとめると、父親はそのまま同じ場所で立って観覧を始めました。
空いたぶんだけ周囲の人も少しずつ前へ詰め、後ろの列にも余裕ができました。
先生は「ありがとうございます」と短く答え、すぐに次の仕事へ戻っていきました。
父親も、最初から周囲を困らせようとしていたわけではなかったのでしょう。ただ、自分の子どもの出番に気持ちが向くあまり、後ろにどれだけ人が増えているのか気づいていなかったようです。
振り返って初めて見えた光景が、自分の行動を考え直すきっかけになったのだと思います。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














