「それ、私が出した袋なんですけど」集積所でごみ袋を動かしていた男性。一度だけ目にした男性の行動に、私が抱いた違和感
窓の下で、自分の袋が動いていた
今の部屋に越して、半年ほどになります。
二階の角部屋で日当たりもよく、家賃も予算内。引っ越してきた当初は「いいところを見つけたな」と思っていました。
少し気になっていたのは、下の部屋に住む年配の男性です。
かなり朝が早い人らしく、まだ外が暗いうちから生活音が聞こえることがあります。
テレビの音が床越しに響いてきて、眠りが浅い日は目が覚めてしまうこともありました。
とはいえ毎日ではありません。「まあ、お互い生活していれば音くらいするよね」と、自分に言い聞かせていました。
そんなある朝、燃えないごみを建物の前の集積所へ出しました。
部屋へ戻り、何気なく窓の下を見ると、あの男性が集積所の前に立っています。
しかも手にしているのは、ついさっき私が置いた袋でした。
「え…?」
しばらく見ていると、男性は袋を持ち上げ、少し離れたところへ動かしました。
どうしても気になって、私は階段を下りました。
「あの、すみません」
男性が振り返ります。
「それ、私が今朝出した袋なんですけど…何かまずかったですか?」
責めるつもりはなかったのですが、思ったより緊張して声が硬くなりました。
男性は一瞬きょとんとしたあと、袋を見ました。
「ああ、これ?いや、ちょっと前に出てたからさ。邪魔かなと思って寄せただけだよ」
「そうだったんですね。急になくなったら困るので、びっくりしてしまって」
「捨てたりしないよ。そこまでしないって」
少しむっとしたような口調でした。
「すみません。そういう意味じゃなくて…分かりました」
それ以上話しても気まずくなりそうで、私はそのまま部屋へ戻りました。
「あれ、また場所が違う」
その日の袋は、無事に収集されました。
ところが、それから何度か気になることがありました。
朝に出した袋が、あとで見ると置いた場所から動いているのです。
少し横へ寄っている程度の日もあれば、一度は集積所の網から外れたところに置かれていました。
「また…?」
窓から見るたび、胸の奥がざわつきます。
ただ、男性が動かしているところを実際に見たのは、最初の一度だけです。
全部あの人がやっている、と決めつけることはできませんでした。
ある日、回覧板を届けてくれた近所の人に、思い切って聞いてみました。
「ちょっと聞いてもいいですか。集積所のごみって、誰かが動かすことあります?」
相手は「ああ…」と少し考えるような顔をしました。
「たまに位置が変わってることはありますね。私も『あれ?』って思ったことあります」
「やっぱりありますよね。私の袋も何回か動いていて」
「でも、誰がやってるかまでは分からないんですよ。私も見たことはないから」
「ですよね…。変なこと聞いてすみません」
「いえいえ。外に出されちゃったら困りますもんね」
同じことを気にした人がいたと分かっただけでも、少しほっとしました。
決めつけずに、管理会社へ伝えた
その後、私は管理会社へ連絡しました。
「誰がやっているかは分からないんですが、ごみ袋が集積所の外に動かされていたことがあって…」
そう説明すると、担当の人は事情を聞いたうえで、「住人の方には、ごみを勝手に移動させないよう案内してみます」と答えてくれました。
しばらくして、建物内にごみ出しについての注意書きが貼られました。
それ以降、私の袋が大きく動かされていることはほとんどありません。
最初に会った男性が、その後も袋を動かしていたのか。それとも別の誰かだったのか。
今でも分かりません。
ただ、あのとき「きっとあの人だ」と決めつけて直接問い詰めなくてよかったと思っています。
今朝もごみを出したあと、窓から一度だけ集積所を見ました。
袋は、私が置いた場所にそのままありました。
それを確認して、ようやくいつもの朝を始めました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














