「土曜日、楽しそうでしたね」店の場所を教えていない同僚の男性。休み明けに突然言われた一言
休み明けの朝、突然聞かれたこと
五年ほど前の夏、四十代だった私は、同じ職場にほとんど話したことのない男性がいました。
同じ階で働いていましたが、担当する仕事も席も別。廊下ですれ違えば会釈をする、その程度の間柄でした。
ある休み明けの朝、給湯室の前を通ったとき、その男性に呼び止められました。
「土曜日、楽しそうでしたね」
何のことか分からず、私は足を止めました。
「…土曜日ですか?」
「外の席にいましたよね。友達と」
そこで、週末に友人とお茶をしたことだと気づきました。
確かに前の週、休憩室で同僚と週末の話になり、「友達とお茶するんです」と話したことはあります。
ただ、店の名前も場所も口にしていません。
「え…見かけたんですか?」
思わず尋ねると、男性は少し笑いました。
「たまたまです。近くを通っただけですよ」
「でも、あの店のことは誰にも言ってないんですけど…」
「本当に偶然ですって」
それ以上聞いても仕方がないと思い、私は「そうですか」とだけ返しました。ただ、なぜか胸の奥に引っかかるものが残りました。
「また会いましたね」が続いた
それから数日後、仕事帰りに立ち寄った店で、その男性を見かけました。
同じ職場なのだから、生活圏が重なることくらいある。そう思って気にしないようにしました。
ところが別の日にも、同じ店で顔を合わせました。
「あれ、また会いましたね」
男性は普段と変わらない調子で笑います。
「そうですね」
私はそれだけ答えて、少し離れた場所へ移りました。
職場でも、退勤するころにエレベーターの前で顔を合わせることが増えました。
廊下を曲がると、すでに男性が立っていることがあります。
「一緒に乗ります?」
「いえ、お先にどうぞ」
「あ、そうですか。じゃあ、お先に」
男性はそう言って乗り込み、扉が閉まりました。
無理に待たれたわけでも、あとをついてこられたわけでもありません。
それでも、顔を見るたびに「またいる」と思うようになっていました。
何もされていないから、うまく説明できなかった
私はその男性とは挨拶以上の会話を避け、昼休みや帰宅時も、できるだけ同僚と一緒に行動するようになりました。
一度だけ親しい同僚に、「最近、あの人とやたら会うんだよね」と話したことがあります。
「そうなの? でも、普通に感じのいい人じゃない?」
「うん……そうなんだけどね」
それ以上は、うまく説明できませんでした。
嫌な言葉を向けられたわけでも、触られたわけでもありません。ただ、話していない休日の店を知られていたことと、その後に何度か顔を合わせたことが、どうしても気になったのです。
翌年、その男性は職場の別の部署へ異動し、それから顔を合わせることはなくなりました。
結局、あの日、私がどの店にいたのかをどうして知っていたのかは、今も分かりません。
偶然だったのかもしれません。それでも、「何となく怖い」と感じた自分の感覚まで、無理に打ち消す必要はなかったのだと、今は思っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














