「食べてたら髪の毛が入ってたんだけど」レジで固まった高校生の私。だが、店長の対応に救われた瞬間
高校生の私が、レジに立っていた夜
三十年以上前、高校生だった私は、鶏の唐揚げを売る店で夕方だけアルバイトをしていました。
その日はレジを担当していて、夜の混雑がようやく落ち着いたころでした。番号を呼んで商品を渡していると、窓際の席にいた男性が紙の箱を持ってこちらへ歩いてきました。
「ちょっと、これ見てくれる?」
カウンターに置かれた箱を見ると、唐揚げはほとんど残っていません。その上に、細い髪の毛が一本ありました。
「食べてたら、髪の毛が入ってたんだけど」
男性はそう言って、髪の毛を指さしました。
私は一瞬、言葉に詰まりました。
働き始めてまだ数か月。こういうときに何を言えばいいのか分からず、とにかく頭を下げました。
「申し訳ありません。少々お待ちください」
それだけ言って、私はすぐ奥にいる店長を呼びました。
「そういうことじゃないんだけど」
店長は私と入れ替わるようにカウンターへ出ると、まず箱の中を確認しました。
「申し訳ありません。不快な思いをさせてしまいましたね」
男性は少し眉を寄せました。
「いや、気をつけてもらわないと困るよ。途中まで食べてから気づいたんだから」
「そうですよね。こちらでも作業している場所を確認します。新しいものをご用意しますので、少しだけお待ちいただけますか」
店長がそう返すと、男性は少し間を置いてから言いました。
「……そういうことじゃないんだけど」
怒鳴っているわけではありませんでした。ただ、交換するだけでは納得できない、という気持ちは伝わってきました。
店長も急いで話を終わらせようとはしませんでした。
「はい。おっしゃりたいことは分かります。原因はこちらでもきちんと確認します。ただ、せっかく買っていただいたので、まず新しいものはお持ちしますね」
男性はしばらく黙っていましたが、やがて小さく頷きました。
店長は揚げ場に声をかけ、新しく用意した唐揚げを箱に詰めてもらいました。
「お待たせしました。申し訳ありませんでした」
男性は箱を受け取ると、「うん」とだけ返し、そのまま店を出ていきました。
扉が閉まったあと、私はようやく肩の力を抜きました。
すると店長がこちらを見て、少しだけ笑いました。
「びっくりしたよね。ああいうときは、一人で何とかしようとしなくていいから」
そして、もう一度だけ言いました。
「ちゃんと呼んでくれてよかったよ」
何が原因だったのか、私には最後まで分かりませんでした。ただ、相手の言葉を否定せず、だからといって必要以上に慌てることもなく対応していた店長の姿は、三十年以上たった今でも覚えています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














