tend Editorial Team

2026.09.11(Fri)

「これじゃ飲み物が少ないでしょう?」氷の量に納得しない客。だが、店長が取り出したものを見て声が変わった

「これじゃ飲み物が少ないでしょう?」氷の量に納得しない客。だが、店長が取り出したものを見て声が変わった

飲み物を渡した瞬間、男性の顔が曇った

学生だったころ、駅前の喫茶店でアルバイトをしていました。

平日の夕方は仕事帰りのお客さんが重なる時間で、その日も注文と会計を待つ人が、カウンターの前に5人ほど並んでいました。

私は注文された冷たい飲み物を作り、男性へ渡しました。

ところが、男性はカップを持ち上げると、すぐに眉を寄せました。

「え、こんなに氷入れるものなの?」

思わず手元を見ましたが、いつもと同じ手順で作ったはずです。

「すみません。氷、少なめで作り直しましょうか?」

そう聞くと、男性はカップをカウンターへ置きました。

「いや、そういうことじゃなくて。これじゃ飲み物が少なく感じるでしょう?」

怒鳴っているわけではありません。それでも、後ろで待っている人にも聞こえるくらいの声でした。

「申し訳ありません。氷は決められた量を入れているんですが…」

「毎回これだけ入れてるの?」

「はい。いつも同じ量で作っています」

そう答えても、男性は納得していない様子でした。

後ろの列が止まっていることも気になり、私はどう説明すればいいのか分からなくなっていました。

店長が取り出したのは、いつもの計量カップだった

そのとき、奥で作業をしていた店長がこちらへ来ました。

「お待たせしてすみません。どうされました?」

男性はカップを指さしました。

「氷が多すぎる気がするんですよ。これが普通なんですか?」

店長はカップを見てから、私に尋ねました。

「いつもの量で作った?」

「はい。いつも通りです」

店長は小さくうなずくと、カウンターの下から氷を量るためのカップを取り出しました。

「うちでは、この線まで氷を入れると決めているんです」

そう言いながら、実際に氷をすくって線の位置まで入れて見せました。

「今、本人にも確認しましたが、いつもの量で作っています。ただ、多いと感じられたなら、氷を少なくして作り直せますよ」

男性は計量カップと自分の飲み物を交互に見ました。

「ああ…ちゃんと決まってるんですね」

先ほどまでより、声が少しやわらかくなっていました。

「はい。でも、お好みもありますから」

「じゃあ、悪いけど少なめでお願いできます?」

「もちろんです」

店長は新しいカップで飲み物を作り直しました。

男性は受け取ると、「どうも」と短く言って席へ戻っていきました。

「困ったら、一人で抱えなくていいから」

止まっていた列がようやく動き始めました。

「お待たせしました。次の方、どうぞ」

店長はそのままレジを手伝い、混雑が落ち着いてから私に声をかけました。

「さっき、どう返したらいいか迷ったでしょう」

私は苦笑いしながらうなずきました。

「はい。何を言っても、余計に怒らせそうで……」

店長は使った計量カップを洗いながら言いました。

「決まり通りに作ったなら、それはそのまま伝えて大丈夫。でも、お客さんが何を求めているのか分からなくなったら、無理に一人で何とかしなくていいからね」

その言葉を聞いて、ようやく肩の力が抜けました。

店長がしたのは、男性を言い負かすことではありませんでした。話を聞き、店の決まりを見せ、それでも希望があるなら応じる。ただそれだけでした。

学生だった私には、その落ち着いた対応がとても頼もしく見えたのを、今でも覚えています。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.11.03(Tue)

「そんなに払ってまで買う?」映画館の売店で私を批判した彼。上映後、空になった箱を見せると黙り込んだ
tend Editorial Team

NEW 2026.11.03(Tue)

「あら〜、お菓子の山ね!」と戸棚を荒らす息子を笑って眺めるママ友。私が真顔で告げると、ママ友の余裕が崩壊
tend Editorial Team

NEW 2026.11.03(Tue)

「先に払うもんじゃないの?」コンビニで連れの女性に驚いた男性。レジで明らかになった思わぬ行動
tend Editorial Team

RECOMMEND

2025.08.20(Wed)

『ひい〜世の中みんな凄すぎます』双子妊娠中の中川翔子、不眠と体の変化に悲鳴。正直な告白に共感の声
tend Editorial Team

2026.05.04(Mon)

「もう帰るの?相変わらず仕事への熱意がないよね」定時退社を「やる気がない」と見下す残業ばかりの先輩。だが、正論をぶつける...
tend Editorial Team

2026.09.06(Sun)

「そんなに急かすなよ、身内だろ」2万円を3年間返さない兄。母にだけ言えずにいる理由
tend Editorial Team