「そんなに急かすなよ、身内だろ」2万円を3年間返さない兄。母にだけ言えずにいる理由
翌月に返すはずだった2万円
兄に2万円を貸したのは、兄が転職した直後でした。
「今月だけ少し助けてほしい」と頼まれ、返すのは翌月という約束でした。
兄からはそのとき、「母には心配をかけたくないから、このことは言わないでほしい」とも言われました。
すぐに返ってくるなら、わざわざ母に話す必要もない。私もそう思っていました。
ところが翌月になっても、2万円は戻ってきませんでした。
こちらから聞くと、「来月には返す」と返事が来ます。さらに何か月かたってもう一度聞いても、返ってくる言葉はほとんど同じでした。
そんなやり取りを繰り返すうちに、三年が過ぎました。
ある週末、実家の近くのファミリーレストランで兄と会いました。
兄は先に席についていて、私を見るとドリンクバーのグラスを一つ差し出しました。
話しているうちに、最近洗濯機を買い替えたという話になりました。
「型落ちで安かったんだ。乾燥までやってくれるやつ」
以前、兄の部屋へ行ったときには新しいゲーム機も置かれていました。
生活に余裕があるのかどうかは私には分かりません。ただ、三年間返ってこない2万円のことが、どうしても頭に浮かびました。
「あの2万円、そろそろ返せない?」
兄は少し黙ってから、グラスを置きました。
「覚えてるよ。ただ、いろいろ出費が続いててさ」
「翌月に返すって言ってたよな」
「そんなに急かすなよ、身内だろ」
それ以上は言い返せませんでした。
母には、今も話せていない
数日後、同期と食事をしたとき、初めてこの話をしました。
「三年前に兄に2万円貸したんだけど、まだ返ってきてない」
「それ、親には言ったの?」
私は首を振りました。
兄から口止めされていたのは最初だけです。けれど翌月、その次の月と黙っているうちに、いつの間にか母へ話すきっかけを失っていました。
今さら言えば、三年間黙っていた理由まで聞かれるでしょう。兄との間だけで終わらせたい気持ちもありました。
その週末、母の家で夕飯を食べました。帰り際、母が何気なく兄の話をしました。
「あの子、最近どうしてるのかしら。あんたとは話してるんでしょう?」
「まあ、たまにね」
喉まで出かかった2万円という数字を、その日も言えませんでした。
玄関で母から煮物の入ったタッパーを渡され、私はそのまま家を出ました。
兄をかばいたいわけではありません。ただ、たった2万円の話を三年間黙っていたことまで含めて母に話すのが、いつの間にか難しくなっていました。
次に兄と会ったときには、「来月」ではなく、いつまでに返すのかをきちんと決めようと思っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














