
男女雇用機会均等法の申し子たちが迎える定年という転換点
1986年の男女雇用機会均等法施行から40年。当時、期待と不安を胸に社会に飛び出した女性たちが、今まさに定年退職という大きな節目を迎えています。しかし、世の中に溢れる定年後のライフプランニングや指南書の多くは、いまだに終身雇用の男性をモデルにしたものばかりです。
ニッセイ基礎研究所の坊美生子准主任研究員は、これまで中高年女性という存在そのものが社会から見落とされてきたと指摘します。メディアが取り上げるのは、華々しいキャリアを築いた女性役員か、あるいは困窮するひとり親世帯といった極端な事例に偏りがちです。その間に存在する、役職にはつかずとも地道に正社員として勤め上げてきた普通の女性たちの姿は、驚くほど透明化されています。
彼女たちは、不十分な育児支援や根強い性別役割分担意識に抗いながら、仕事と家庭の両立という過酷なマルチタスクを数十年間にわたってこなしてきました。SNS上では、そんな時代を生き抜いた女性たちから、定年後を前向きに捉える声が上がっています。
『仕事も家事も育児も24時間体制でこなしてきた人たちなので、定年になったからといってやることがなくなるなどということはありません』
このように、家庭内や地域に多様な役割を持つ女性にとって、定年は単に役割が一つ減るだけの通過点に過ぎないという意見が見られます。一方で、現役時代の男女賃金格差が老後の受給年金額に直結するというシビアな現実も横たわっています。
『入社当時は男女格差アリアリで、失われた30年がまんま職業人生でした。税金ばっかり取られて、なんだったんでしょうねえ』
こうした溜息混じりの声は、均等法第一世代が背負ってきた構造的な不利益を物語っています。また、独身で定年を迎えた女性からは、地域のコミュニティが主婦層中心であるために、かえって居場所を見つけにくいという孤独の懸念も示されています。
定年後の女性を巡る議論は、決して彼女たちだけの問題ではありません。働き方が多様化し、男性もまた会社という唯一の居場所を失いつつある現代において、複数の役割を使い分けてきた女性たちの生き方は、これからの現役世代にとっても重要なヒントになるはずです。
社会がこの普通の人々の声にようやく耳を傾け始めた今、定年という概念そのものが、男女問わず人生を豊かに再構築するための前向きなステップへと変化していくことが期待されます。














