「すぐ降りるので大丈夫です」50代になり、席を譲っても断られる日々。赤ちゃんを抱えたお母さんに勇気を出して席を譲った結果
遠慮されることが増えた
50代になると、電車で誰かに席を譲ろうとしても、遠慮されて断られる場面が増えてきます。
「すぐ降りるので大丈夫です」と笑顔で返されると、こちらも気まずくなって、声をかけるのを少しためらうようになっていました。
私もここ数年は、譲るかどうか一拍考える癖がついていたのです。
親切心が空回りして気疲れだけが残ることも、何度かありました。
その日は電車で、立ち仕事続きの体を引きずりながら、ようやく座れた席に腰を下ろしたところでした。
次の駅で扉が開き、ぎゅうっと人が押し込まれてきます。
その人波の中に、抱っこ紐で赤ちゃんを胸に抱えたお母さんが立っているのが見えました。
20代後半くらいでしょうか。片手にバッグ、もう片方の手でつり革を握りしめています。
電車がカーブにさしかかるたび、抱っこ紐の中の赤ちゃんが、ふわふわと頼りなく揺れているのが分かりました。
お母さんの目元は明らかに疲れていて、髪も急いでまとめたままという感じです。誰かに席を譲ってもらえる空気は、満員の車内のどこにも見当たりません。
迷う前に出た一言と即答の声
私は鞄を持ち直し、立ち上がって声をかけました。
「よろしければどうぞ」
断られるかもしれない、と心の片隅で構えていた私の予想は、いい意味で外れます。
彼女は一瞬だけ目を見開き、すぐにこう返してくれたのです。
「ありがとうございます」
声には、気を遣う遠慮も、申し訳なさで身を縮める躊躇もありませんでした。
本当に助かりました、という気持ちがそのまま乗った、温かい返事でした。
座った瞬間、彼女の肩がふっと下がり、抱っこ紐の中の赤ちゃんもどこかほっとした表情に見えます。
(あぁ、譲ってよかった)
胸の奥が静かに熱くなりました。隣に立っていた人が、ほんの少しだけ場所を詰めて、私のためにスペースを作ってくれたのも嬉しい出来事でした。
声には出さない優しさが、車両のその一角に小さく回っていく感じがあったのです。
終点までの数十分、立ったまま揺られて、腰はさすがに重くなりました。それでも降りるときの足取りは妙に軽くて、駅のホームに出たときには思わず深呼吸をしてしまったほどです。
たった一言の「ありがとうございます」が、50代の朝にこんなにも力をくれるのかと、しみじみ感じた一日でした。あの日以来、迷う前に声をかける自分でいたいと、少しだけ思うようになっています。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














