「まだそれしてるんですか」工程を抜かして有能ぶる中堅の先輩→上司に確認した瞬間に走った沈黙と消えない違和感
教科書通りの私を笑った中堅の先輩
新しい職場で業務を教えてくれたのは、私より少し下の中堅の女性社員でした。50代で入った私を歓迎してくれているように見えたのは、入社して数日のあいだだけだったのです。
仕事に慣れてきた頃、彼女の手の動きが妙に早いことに気づきました。同じ書類を捌いているはずなのに、私の倍近いスピードで完了させていく。最初は単純に「キャリアが違う」と納得していましたが、ある時ふと、彼女がチェックの工程を一段抜かしていることに気づいたのです。
そのことに気づいたタイミングで、彼女は私の手元を覗き込み、軽い口調で言いました。
「まだそれしてるんですか」
抑揚に皮肉のとげがありました。机の島の向こうから、直属の課長の耳にも届く声量。彼女はその後も同じ言葉を繰り返し、課長に対しては「自分は早い、新人さんは遅い」という構図をさりげなく植え付けていきました。
飲み会の席でも同じです。私が静かに食事を進めている横で、彼女はにこにこと笑いながら課長に言うのです。「ほんとに、教えがいないというか」。冗談めかしているけれど、棘ははっきり残ります。胸の奥が、ざらりと擦れる感覚がありました。
勇気を出して課長に確認、その瞬間の沈黙
このままでは私だけが「仕事の遅い人」として刷り込まれてしまう。
それ以上に、本当に省いていい工程なのかが気になって眠れない夜が続いたのです。私は意を決して、定時直前に課長の席へ歩いていきました。
「○○の工程は必要ですか、省いて進めても大丈夫でしょうか」
努めて事務的な口調で尋ねました。課長は手元の書類から顔を上げて、即答に近い速さで答えたのです。
「いえ、それは飛ばしてはいけません」
島の向こうの、彼女のキーボードの音がぴたりと止まりました。一瞬の沈黙のあと、彼女がこちらに歩いてきます。課長の前で、戸惑ったような小さな声を作りました。
「どうしましょう、私その工程をしていなかったです」
うっかりミスの体に仕立てた弁明でした。課長は注意の言葉を返し、その場は流れて終わったのです。けれど私の机のそばを通り抜けるとき、彼女は声を低めて、にこっと笑いながらこう言いました。
「モヤモヤしていたことがわかってすっきりしましたね!」
謝罪はありません。むしろ、私の悩みに寄り添ってあげたかのような言い回しに、胸の真ん中がすっと冷えていったのです。
それ以降も契約満了まで、彼女は課長の前での有能アピールをやめませんでした。割り切ったつもりでも、いまも夜ふと、あの沈黙の数秒が思い出されてしまうのです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














