tend Editorial Team

2026.06.05(Fri)

「痛いんだけど」朝の通勤電車で肘を張り続けた隣の乗客。だが、降り際にスマホを落とした瞬間

「痛いんだけど」朝の通勤電車で肘を張り続けた隣の乗客。だが、降り際にスマホを落とした瞬間

黙って縮こまるしかなかった

座席に座ってすぐ、隣の人の肘が少し張っているのに気づいた。

(痛いんだけど)

朝の混雑だから仕方ない部分もある。最初はそう思って体を内側に傾けた。でも少し距離を空けると、また少しずつ肘が戻ってくる。

相手はスマホに集中していて、こちらのことは見えていないらしい。何度か角度を調整しながら、それでも何も言えないまま時間が過ぎた。

(声に出すほどのことじゃない)と頭では思っていた。

でも、何も言えない自分にも苛立ちが募っていった。こちらがどれだけ縮こまっても、向こうの肘は自然に戻ってくる。

その繰り返しに、疲れてきた。こんな小さなことで消耗している自分にも、うんざりした。

しばらくして、アナウンスが流れた瞬間に隣の人がこちらをちらりと見た。そしてため息まじりに、小さく舌打ちをした。

「まるで私が悪いみたいな視線だった」

何もしていない。動いているのは向こうの肘だ。それなのに、なぜか責められているような気分になった。背中が強張り、余計に何も言えなくなった。朝からこんな気分になるのかと思うと、どこか悔しかった。

スマホが床に落ちた音

次の駅に着くと、隣の人が立ち上がった。

その拍子にスマホが手からすべり、床に落ちた。硬い音が車内に響いた。

近くに立っていた人も、向かいに座っていた人も、誰も動かなかった。自分も何もしなかった。拾おうと屈む相手を、ただ静かに見ていた。

スマホを手に取った相手は画面を一度確かめてから、扉の外へ消えた。

それだけのことだった。でも、なぜか胸の奥がすっきりした。誰かに何かをしたわけでも、言い返したわけでもない。それでも、あのモヤモヤが消えていた。

電車が動き出した朝

扉が閉まり、電車がゆっくりと動き出した。隣の席が空いた。少し余裕を持って腰を落ち着けた。背もたれに体を預けると、ずっと張っていた肩の力が抜けていった。

さっきまで胸につかえていたものが、気づいたらなくなっていた。縮こまったことも、舌打ちにびくりとしたことも、もうどうでもよかった。

言い返さなくても、世界は意外とちゃんと帳尻を合わせてくれる。

そう思いながら、いつもより少し軽い気持ちで窓の外を眺めた。駅のホームに人が集まっては流れていく。

それを見ながら、今日一日が始まっていく感じがした。何も言わなかったけれど、それでよかったのだという気がした。

肘の圧力も、舌打ちも、今となっては遠い出来事のようだった。黙って縮こまっていた自分のことも、責めなくていいと思えた。こうして朝が始まっていく。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.10.24(Sat)

「まだ返してないの?」友人のひと言に言葉を詰まらせた彼。旅行代金を集める場で明かされた3万円の貸し借り
tend Editorial Team

NEW 2026.10.24(Sat)

「こっちは仕事してるんで」ホテルの朝食会場で席を空けない男性。だが、女性スタッフの案内で状況が一変
tend Editorial Team

NEW 2026.10.24(Sat)

「そっちが打ち間違えたんだろう?」病院の会計で怒鳴る男性。だが、上長が明細の一行を指さした瞬間、態度が一変
tend Editorial Team

RECOMMEND

2025.10.08(Wed)

つるの剛士、『SDGs』や『ワークライフバランス』に「むしろ距離を置きたくなってしまう」と拒否感をあらわに。この心境の理...
tend Editorial Team

2026.08.24(Mon)

「また始まったね、練習」近所の子供の響く打球音。だが、突如打球音が聞こえなくなったワケ
tend Editorial Team

2026.04.09(Thu)

「先輩、ここってどうやればいいんですかぁ?」面倒な仕事を全て押し付け、手柄を奪う後輩。しかし、彼女が狙う「本命の彼」がア...
tend Editorial Team