「アプリどれだっけ」深夜のコンビニで支払いに手こずった男。待っている時に感じたモヤモヤ
深夜のコンビニ
冷たい雨の日に帰宅途中、温かい飲み物だけ買おうと深夜のコンビニに飛び込んだ。
傘を差していても風で肩のあたりが湿る。外気で体が冷え切っていた。
レジは1台しか動いていなかった。前にはひとりだけ客がいた。40代くらいの男で、すぐに終わるだろうと思っていた。
だが、その男がレジ前でスマートフォンを取り出した瞬間、嫌な予感がした。
「アプリどれだっけ」
独り言を口にしながら、画面をだらだらとスクロールし始めた。
店員は笑顔で「少々お待ちください」を繰り返した。後ろに人がじわじわと並び始め、傘から落ちる雫で床に小さな水たまりができていた。
1つ目のアプリを開いて閉じる。2つ目を開いて首をかしげる。3つ目を開いたところで、ようやくバーコードらしきものが画面に出た。
チリリとスキャン音が鳴ったときには、店内の時計の針が7分進んでいた。たった1本の会計に7分。
次は自分の番だった。後ろの列の気配が膨らんでいくのを感じながら、靴のすき間から染み込んだ水で靴下が冷たく湿っていくのを耐えていた。
指先までじわじわと冷えが広がっていた。
店員の声は機械音に混じって聞き取りづらかった。聞き返すと、「ポイントカードはお持ちですか?」と繰り返してくれた。
持っていない。そう答えてやっと飲み物のバーコードが読まれた。
外に出た瞬間、雨は止んでいた
会計を終えて自動ドアを出た瞬間、雨は止んでいた。
傘を差す必要もなく、急ぐ理由もない。
ゆっくり歩けばよかった。飲み物を選ぶときにもっと迷えばよかった。そう思っても、もう遅い。
前の男のせいだ、と思った瞬間、自分が情けなくなった。自分だけが焦って雨に追われて飛び込んで、靴下を濡らした。あの男は最後まで悪びれもせず、平然と店を出ていった。
帰り道の信号で立ち止まり、手のひらで温かい飲み物を握り直した。濡れた街は静かで、コンビニの中でこみ上げていた苛立ちが急に場違いに思えた。靴下の冷たさだけが、いつまでも夜に残っていた。
家に着いて靴下を脱ぐと、足の裏がじんわりと痺れていた。あの7分は、もう取り戻せないのだと改めて思った。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














