「上の人、また怒ってるの?」子供が騒ぐとドンと床を叩く上の階の夫婦。だが、夫婦が引っ越して離れたワケ
床を叩く音との戦い
賃貸アパートの1階で、私は夫と幼い子ども2人と暮らしていた。
真上の部屋には、しばらく前から子どものいない夫婦が住んでいた。
越してきて半年ほどは、上の階を意識することもなかった。それがある時期から、状況は一変する。
子どもがほんの少し動くだけで、真上からドン、ドンと床を叩きつける音が返ってくるようになったのだ。
はじめは偶然かと思った。けれど子どもが数歩走るたび、その音は執拗に、長く続くようになった。
明らかに、こちらへの当てつけだった。
「上の人、また怒ってるの…?」
おびえた上の子の声に、胸が締めつけられた。
私はぞっとして、思わず子どもを抱き寄せた。やがて郵便受けには、文句の手紙まで入れられるようになった。
一冊のノートが流れを変えた
このまま泣き寝入りはしたくなかった。私は、一冊のノートを用意した。
床を叩く音がした日付と時刻、続いた長さを、一件ずつ書き込んでいく。手紙が届いた日には、その紙をページに貼りつけた。スマートフォンには、あの重い打撃音も録音していった。
ノートが厚みを増した頃、私はそれを持って管理会社と大家に相談した。
「これだけの記録があります。手紙も、音も、全部残しました」
担当者はノートをめくる手を止め、低い声で言った。
「これはひどい。うちの規約では、はっきり禁止している行為ですよ」
数日後、管理会社と大家が、上階の夫婦のもとを訪ねて注意した。証拠が揃っている以上、言い訳は通らない。
「そちらの子どもが騒ぐからでしょう」
そう食ってかかった夫婦だったが、日時の記録と手紙を並べられると、次第に声が小さくなっていった。最後には、二人とも青ざめたまま黙り込んだという。
「もう二度とさせません。安心してお住まいください」
大家のその言葉どおり、廊下で会っても、あの夫婦は目を合わせようとしなくなった。あれほど激しかった床を叩く音も、ぴたりとやんだ。
そして数か月後、先にアパートを去ったのは、あの夫婦のほうだった。荷物を積んだトラックが走り去っていくのを、私は窓の内側から、静かに見送った。
「ママ、もう上、静かだね」
子どもの明るい声が、久しぶりに部屋に響いた。証拠を積み上げて正面から向き合ったことで、奪われた我が家の平穏は、ようやく戻ってきたのだった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














