「こっちは山盛りで、私はこれだけですか?」親戚総出の餅つき。だが、大伯母の贔屓を笑顔で指摘した瞬間
序列で決まる餅の量
毎年恒例の、親戚総出の餅つき。庭に湯気が立ちのぼり、威勢のいい杵の音が響く。
つきたての餅を丸め、白餅とあんこ餅に仕分けていく作業は、なんだかんだで楽しい。台所で軽食をつまみ、子どもたちのはしゃぐ声が絶えない、一年でいちばんにぎやかな時間だ。
手も口もよく動いて、気づけば夕方になっている。
けれど、私にはこの行事に、一つだけずっと引っかかっていることがあった。
餅を分ける段になると、家の序列が、これでもかとはっきり出るのだ。
一族の長にあたる家の袋には、あんこ餅がこんもりと山盛り。かたや嫁いで日の浅い私の袋には、つき残りの、形のいびつな白餅が数個。
あんこ餅は、ひとつも入っていない。同じ台所に立ち、同じ手で丸めたはずなのに、どうしてこうも違うのか。
「はい、お疲れさま」
配り役の大伯母は、毎年しれっとそう言って袋を押しつけてくる。もう何年も、私は何も言えずに、黙って受け取っては帰り道でため息をついてきた。
たかが餅のこと、と自分に言い聞かせても、あの軽い袋を手にするたびに、胸の隅がちくりとした。
笑顔の指摘で黙った配り役
その年、私はふと思い立って、受け取った袋を軽く掲げながら、明るく声をかけてみた。
「こっちは山盛りで、私はこれだけですか?」
とげのない、あくまで朗らかな調子で。それでも、配り役の大伯母はぴたりと固まった。
「え、いえ、これはたまたま……」
しどろもどろに言葉を濁したきり、続きが出てこない。まわりの親戚も、ようやくそれぞれの袋の中身を見比べて、ざわつきはじめた。
「言われてみれば、ずいぶん違うわね」
「毎年そうだったの?気づかなかった」
「あんこ餅、あんなに余ってるのに変じゃない」
あちこちから声が上がると、大伯母はもう何も言えず、口をつぐんでうつむいた。見かねた親戚の一人が、山盛りのあんこ餅をどっさり取り分け、私の袋にも三個、四個と入れてくれる。空っぽ同然だった袋が、ずしりと重くなった。
「ちゃんと平等に分けなきゃね」
その一言に、こわばっていた場がやわらいだ。次の年から、餅は最初から人数分きっちり分けられるようになった。
あの日、笑顔でひと言こぼしただけで、長年の不公平が、あっさり消えてしまったのだ。うつむいた配り役を横目に、私は温かいあんこ餅を頬張った。甘い餡が、じんと胸に沁みわたった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














