「きゅうり、今年は27本ね」我が家の庭の状況を把握している隣人。だが、防犯カメラを置いてみた結果
今年のきゅうりの本数まで
庭の一角で家庭菜園を続けて、もう何年になるだろう。
今年はきゅうりがよく育ち、夏の間、食卓をにぎわせてくれた。
その収穫の様子を、なぜか隣の女性のほうが詳しく把握していた。
垣根越しの立ち話で、彼女はさらりと言ってのけた。
「きゅうり、今年は27本ね」
思わず耳を疑った。私自身、収穫のたびにノートに数を書き留めていて、その時点でちょうど27本。
数字まで、寸分たがわず合っていたのだ。
「どうして、本数まで……」
「毎日眺めてれば、だいたい分かるわよ。昨日は留守にしてたみたいだけど、朝のうちに3本採ってたでしょう」
その日、私は朝から出かけていて、家には誰もいなかった。
留守の間に庭へ入り込んで、収穫のあとまで確かめていたとしか思えない。垣根はあるが、背伸びをすれば畝の様子はのぞける。彼女は毎日、我が家の庭を品定めするように眺めていたのだろう。
「見てらっしゃったんですか、うちの庭を」
「見えちゃうんだもの、しかたないでしょう」
悪びれもせず、彼女は笑った。その日から、庭に出るたびに視線を感じるようになった。
誰かに数えられている畑は、もう自分だけのものではない気がした。
防犯カメラを見た日から
耐えられなくなった私は、ネット通販で大きめの防犯カメラを取り寄せた。中身は空の、見た目だけのダミーだったが、それでかまわなかった。
玄関の軒先に、庭を見渡せる角度で据え付けた。
効き目は、その日のうちに現れた。庭に出た私のところへ、隣の女性がいつものように近づいてくる。
だが、その足がふいに止まった。視線の先には、こちらを向いたカメラがあった。
「ねえ…あのカメラ、どうしたの」
問いかける声が、明らかに硬い。
「最近物騒でしょう。庭までしっかり映るようにしたんです」
私が穏やかにそう返すと、彼女の顔から笑みが消えた。
「そう…余計なこと、聞いちゃったわね」
そう言い残すのが精一杯だったのか、彼女は目を伏せ、逃げるように垣根の向こうへ引っ込んでいった。
「あそこの奥さん、よその庭ばかり見てるのよ」
後になって、近所でも彼女の詮索は噂になっていたと知った。
そうこぼしていた人が、ほかにもいたそうだ。
カメラを見た日から、彼女の態度は一変した。あれほど毎日のように交わしていた挨拶が、ぱたりと途絶えた。
庭先ですれ違っても、彼女は気まずそうに顔をそむけ、足早に通り過ぎていく。きゅうりが何本採れたかを私より先に言い当てる声は、もう二度と聞こえてこなかった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














