「こんな時間まで、帰れないのかい」遅番の電話対応で疲れていた私。だが、受話器の向こうから届いた一言に救われた瞬間
遅番の日は、20時を過ぎても電話をかけていた
以前、手続きに関する問い合わせを受ける仕事をしていました。
勤務には早番と遅番があり、私が遅番の日は、日中に連絡がつかなかったお客様のうち、あらかじめ夕方以降の連絡を希望されている方へ電話をすることもありました。
繁忙期になると問い合わせも増え、20時を過ぎても席に残っていることがあります。
「夜分に失礼いたします」
そう切り出して、書類の不足や手続きの確認をする毎日でした。
もちろん、こちらから突然遅い時間に電話をするわけではありません。それでも、時計を見るたびに「こんな時間まで仕事をしているのか」と自分でも少し疲れを感じることがありました。
その日も20時半を過ぎ、私は最後の一件に電話をかけました。
用件より先に聞かれたこと
数回の呼び出し音のあと、年配の男性が電話に出ました。
「夜分に失礼いたします。先日いただいたお手続きについて、確認したいことがございまして」
私が名乗って用件を説明しようとすると、男性は少し驚いたように言いました。
「こんな時間まで、帰れないのかい」
一瞬、怒られたのかと思いました。
「私は遅番ですので大丈夫です。お気遣いいただきありがとうございます」
そう答えると、男性は少し間を置いてから言いました。
「そうか。でも遅くまで大変だね。無理しないようにね」
その言葉が、思っていた以上に胸に残りました。
電話口では、手続きの内容を間違えないこと、失礼のない言葉を使うことばかり考えていました。自分が疲れているかどうかなど、仕事中に気にかけてもらうとは思っていなかったのです。
確認事項を伝えると、男性は丁寧に答えてくれました。
そして電話を切る直前にも、
「今日はそれで最後だといいね。気をつけて帰りなさい」
と声をかけてくれました。
何気ない一言を、今でも覚えている
その電話のあと、私はパソコンを閉じて帰る準備をしました。
仕事そのものが楽になったわけでも、翌日から忙しさがなくなったわけでもありません。
それでも、不思議とその日は少しだけ肩の力が抜けていました。
お客様から感謝の言葉をいただくことはありましたが、「ちゃんと帰りなさい」と自分自身を気遣ってもらったのは初めてだったからです。
忙しいときほど、電話の向こうにいる相手を「次の一件」として見てしまいそうになることがあります。
けれど、声の向こうには一人の人がいる。それは相手から見た私も同じなのだと、その男性の言葉で気づかされました。
何年経っても、夜の電話を思い出すとき、一番に浮かぶのは手続きの内容ではありません。
「無理しないようにね」
たったそれだけの言葉ですが、疲れていた私には十分すぎるほど温かい一言でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














