「きれいに咲いてるんです」家庭菜園している近隣住民。だが、本当は伝えたい本音とは
言おうと思うのに、いつも飲み込んでしまう
自宅の前まで車で戻ってくると、私はときどき同じ言葉を頭の中で繰り返します。
「車が通るので、ホースを少しよけてください」
向かいの家では、ご主人が花を育てています。
自宅前の道路沿いには鉢やプランターが並び、季節ごとに色とりどりの花が咲いています。
手入れをしているご主人と顔を合わせれば、向こうから気さくに挨拶してくれます。
「今ちょうどきれいに咲いてるんですよ」
そう声をかけられれば、私も「本当ですね」と返します。
花がきれいなのは本当ですし、普段のご主人に嫌な印象があるわけでもありません。
気づけば、道路をホースが横切っている
ただ、困るのが水やりの時間です。
花に水をやるためのホースが、道路を横切るように伸びていることがあります。
車で通るときは、ホースを踏んで傷めないように速度を落とします。
バイクの日は、濡れた路面とホースが重なっているだけでも少し緊張します。
こちらの車に気づくと、ご主人はすぐにホースを持ち上げてくれます。
「あっ、すみません。今どけますね」
そのたびに私は窓を開けて、「いえ、大丈夫です」と答えてきました。
本当は、大丈夫ではありません。けれど毎回すぐに気づいてくれるので、「わざわざ注意するほどでもないか」と思い、言葉を飲み込んでしまうのです。
後から越してきた私には、なおさら言いづらかった
花のことで気になることは、ほかにもあります。
風の強い日には枯れ葉や土がこちらまで飛んでくることがあり、蒸し暑い日には肥料らしいにおいを感じることもあります。
それでも、向かいの家は私が越してくる前からそこにありました。
これまで顔を合わせれば普通に挨拶を交わしてきただけに、小さな不満をきっかけに関係がぎくしゃくするのも避けたいと思ってしまいます。
今朝も、道路には水やりのホースが伸びていました。ご主人は花の手入れに夢中で、こちらにはまだ気づいていません。
声をかけようか迷った末、私はホースを避けるようにゆっくり車を進めました。
「きれいに咲きましたね」
あとで顔を合わせたとき、口から出たのはやはりその言葉だけ。本当に伝えたい一言は、今日も言えないままでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














