「隠そうとしました。ごめんなさい」割れた商品を棚の下へ寄せていた客。だが、店員が見せた行動とは
割れる音のあと、棚の前に立っていた人
雑貨店で働いていたころの話です。食器やフレグランスなど、割れ物を多く扱う店でした。
商品をうっかり落としてしまうお客さんは、年に何度かいらっしゃいます。そんなときは、まず怪我がないかを確認して、スタッフが破片を片づけることになっていました。
ある日、売り場の奥から「ガシャン」と大きな音がしました。
慌てて向かうと、一人のお客さんが棚の前に立っています。足元を見ると、割れた商品の破片があり、その一部を靴先で棚の下へ寄せようとしていました。
私と目が合うと、その人はびくっとしたように足を止めました。
「あ……ごめんなさい。ちょっと落としちゃって」
そう言いながら、その場を離れようとします。
私は反射的に責めそうになりました。でも、先に気になったのは怪我でした。
「お怪我ないですか?手とか足、大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫。別に怪我はしてないから」
少し早口で答えると、また歩き出そうとします。
私はほうきとちりとりを持ってきて、棚の下をのぞきました。
「あ、ちょっと待ってください。ここにも破片が入ってますね」
細かな破片がいくつも見つかりました。
「大丈夫です。怒ってるわけじゃないんです。ただ、このまま残ると危ないので……片づけだけさせてください」
そう言うと、その人は少し気まずそうな顔で立ち止まりました。
「すみません、隠そうとしました」
私はしゃがんで、棚の下から破片を少しずつ掃き出しました。
すると後ろから、小さな声が聞こえました。
「……すみません」
振り返ると、その人はまだそこに立っていました。
「落としたのは、本当にわざとじゃないんです。でも、割れたの見たら焦っちゃって……」
そこで一度言葉を止めてから、さらに声を落としました。
「隠そうとしました。ごめんなさい」
私は少し驚きました。
「そうだったんですね。でも、お怪我がなくてよかったです。破片は危ないので、あとは私がやりますね」
「はい……本当にすみません」
最初とは違って、その人は何度か頭を下げてから店を出ていきました。
責める言葉をぶつけたわけでも、長く注意したわけでもありません。ただ「怪我はありませんか」「危ないので片づけます」と伝えただけでした。
それ以来、店内で何かが割れる音を聞くと、私は以前より意識して最初の言葉を選ぶようになりました。
「大丈夫ですか?お怪我ありませんか?」
そう声をかけると、「すみません、落としてしまいました」とほっとしたように話してくださる方が多かったです。
もちろん、割れた商品をそのままにしていいわけではありません。それでも、最初から責めるより、まず安全を確認したほうが、お互いに落ち着いて話せることもあるのだと知った出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














