「ポイントカードはお持ちですか」レジで本来聞くべきだった言葉。だが、言い間違えた私に返した、客の一言とは
その方は少し考えて、自分の頭を指さした
レジに立っていると、お客さんのかごの中身と、後ろに続く列を交互に見るのが癖になります。夕方はとくに混みやすく、一人でもお待たせしないよう、いつもより少し早口になっていました。
その日は朝から立ちどおしで、疲れもたまっていたのだと思います。
目の前のお客さんの商品を読み取りながら、いつものように「ポイントカードはお持ちですか」と聞くつもりでした。
ところが、口から出たのはまったく違う言葉でした。
「身長はお持ちですか…あ、レジ袋はご利用ですか」
言った瞬間、自分でも何を聞いたのか分かりました。顔が一気に熱くなり、「すみません」と言い直そうとした、そのときです。
目の前にいた年配の男性のお客さんが、少しだけ考えるような顔をしました。
そして片手を上げ、自分の頭のてっぺんあたりを指さしたのです。
「たぶん170センチくらい持っています、レジ袋もください」
あまりにも自然な返しだったので、一瞬、本当に普通の質問をしたような気さえしました。
私が慌てているのを見て、冗談にして助けてくださったのだとすぐに分かりました。しかも、レジ袋についてもしっかり答えてくれています。
「すみません、ありがとうございます」
ようやくそう言うと、その方は笑いながら小さく頷きました。
言い間違えた私を、お客さんの一言が救ってくれた
後ろに並んでいた方からも、こらえきれないような笑い声が聞こえました。
大声で笑うというより、思わず頬がゆるんだような笑い方でした。それまで無言で順番を待っていた列の空気が、ほんの少しやわらいだように感じました。
私はレジ袋に商品を入れ、その方へ渡しました。
「ありがとうございました」
その方は最後まで明るい表情のまま、店を出ていきました。
隣のレジにいた先輩も、手を動かしながらこちらを見て笑っています。
「いい返しだったね」
恥ずかしさは残っていましたが、それまで張りつめていた気持ちはずいぶん軽くなっていました。
次のお客さんのかごを受け取り、今度こそ落ち着いて声をかけます。
「ポイントカードはお持ちですか」
今度は間違えませんでした。
レジの仕事では、こちらがお客さんを案内する側だと思っていました。でも、失敗した瞬間に、たった一言で助けてもらうこともあります。
今でも忙しい時間帯に「ポイントカードはお持ちですか」と口にすると、頭のてっぺんを指さしたあの方の笑顔を思い出します。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














