「もっとちゃんと仕事してよ」定食屋で響いたクレーム。だが、店長の対応で空気が変わった
いっせいに箸が止まった、昼の店内
昼どきの定食屋で、私は窓際の席に座り、注文した日替わり定食を待っていました。
店内には20人ほどの客がいて、厨房からは食器の音や注文を確認する声が絶えず聞こえていました。
店員も忙しそうにテーブルの間を行き来しています。
そんな中、レジの近くから男性客の大きな声が聞こえてきました。
「これ、頼んだものと違うんですけど」
テーブルに運ばれた料理が、注文したものと違っていたようです。店員は伝票を確認すると、すぐに頭を下げました。
「申し訳ありません。すぐに作り直します」
男性はしばらく料理と店員を見比べていました。昼休みの途中だったのか、腕時計にも何度か目を向けています。
「急いでるんだよ。もっとちゃんと仕事してよ」
その声が店内に響き、近くにいた客たちの会話が止まりました。
私も思わず手元から顔を上げました。
注文を間違えられて腹が立つ気持ちは分かります。ただ、大勢がいる前で強い口調で責められている店員を見ると、こちらまで居心地が悪くなりました。
店員はもう一度謝り、厨房へ戻ろうとしましたが、男性はまだ納得していない様子でした。
「すぐって、どのくらいかかるの?」
「確認してまいります。申し訳ありません」
低い声で答えた店長のあとに、戻ってきた静けさ
そこで厨房から店長らしい男性が出てきました。
男性客の前まで行くと、店員と入れ替わるように立ち、落ち着いた声で話しかけました。
「お待たせして申し訳ありません。こちらの確認不足です。私が対応しますので、少々お待ちいただけますか」
男性客はまだ不満そうでした。
「こっちは時間がないんだけど」
「はい。できるだけ早くご用意します」
店長はそれ以上言い返すことも、店員をかばうために客を責めることもしませんでした。
ただ自分が対応を引き取り、店員には小さな声で何か伝えて厨房へ戻しました。
男性はしばらく黙っていましたが、やがて空いている席へ戻りました。
「…じゃあ、お願いします」
そのころには、止まっていた周囲の会話も少しずつ戻っていました。食器の音が聞こえ始め、レジの列も再び動き出します。
しばらくして作り直した料理が運ばれると、男性は何も言わずに受け取りました。
注文を間違えた店側に落ち度がなかったわけではありません。それでも、混雑した店内で一人の店員だけが強く責められている場面は、見ている側にも緊張が伝わるものでした。
店長が大きな声で言い返すのではなく、静かに対応を引き取ったことで、その場がそれ以上こじれなかったことを今でも覚えています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














