「それ、ちょっと話が大きくなってない?」軽い愚痴を大げさに話された私。だが、ほとんど話したことのない人が助けた理由
軽く話したつもりだったのに
子どもの習い事が終わるまで、保護者は待合の椅子で過ごします。週に一度そこで顔を合わせるうちに、よく話すようになった人がいました。
明るくて話しやすい人で、以前、家事の話になったときに「最近ちょっとバタバタしてて」と軽くこぼしたことがあります。
その日は待合の椅子がほとんど埋まっていました。私の近くには3人ほど座っていて、そのうち2人とは挨拶をする程度の間柄でした。
何となく家事や夫婦の分担の話になったとき、その人が急に私を見て笑いました。
「でも、この人のところはもっと大変だよね。ほとんど一人でやってるんでしょ?」
私は思わず顔を上げました。
「え?いや、そこまでじゃないよ」
すると別の人が、「えー、休みの日も?」とこちらを見ました。
「いやいや、夫がいる日はやってもらってるし…」
「またまた。この前、全然やってくれないって言ってたじゃん」
冗談っぽい口調でしたが、私は笑えませんでした。
私が話したのは、夫の帰りが遅い日が続いて疲れている、という程度のことです。
それがいつの間にか、「家のことを全部一人で背負っている人」の話になっていました。
「そんなふうに言ったつもりじゃないんだけどな……」
小さく返しましたが、相手は「まあまあ」と笑っています。ここで強く否定するのも大げさな気がして、私は膝の上の袋の紐をいじっていました。
隣から、思いがけない一言が出た
そのとき、隣に座っていた人がこちらを見ました。名前を知っている程度で、ほとんど話したことのない人です。
少し間を置いてから、その人が言いました。
「それ、ちょっと話が大きくなってない?」
さっきまで笑っていた声が、そこでふっと止まりました。
私の話をしていた人が、「え、そうかな?」と少し戸惑ったように笑います。
隣の人は責めるような言い方はせず、
「家のことって、その日によって全然違うしね。外からじゃ分からないですよ」
と続けました。
「ああ、それはそうだよね」
誰かがそう言うと、別の人が「うちも夫が遅い日は全部こっちだよ」と話し始めました。
「分かる。夕飯とお風呂が重なると、もうバタバタ」
「うちは習い事の日が一番きついかも」
話はいつの間にか、それぞれの家の時間のやりくりへ移っていました。
私の話をしていた人も、「うちも水曜だけは大変なんだよね」とその輪に入り、私の家庭の話には戻りませんでした。
帰り道で、ようやくお礼を言えた
やがて扉が開き、子どもたちが出てきました。
帰り道、さっき隣に座っていた人と途中まで同じ方向になりました。子どもたちが少し前を歩いています。
横断歩道の前で、私は思い切って声をかけました。
「さっき…ありがとうございました」
その人は少し驚いた顔をしてから、「ああ」と笑いました。
「気になっただけですよ。嫌そうな顔してたから」
「自分で止めればよかったんですけど、なんか言いづらくて」
「分かります。みんなが笑ってると、違うって言いにくいですよね」
そう言って、その人は二度、小さくうなずきました。
信号が青になり、子どもたちが先に歩き出します。
「じゃあ、また来週」
「はい。また」
角で別れたあと、私は少しだけ肩の力が抜けていました。
何気なく話したことでも、人づてになると少しずつ形が変わることがあります。そして、その場で笑われると、自分から訂正するのは思った以上に難しいものです。
だからこそ、あの日のさりげない一言が、今でも心に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














