「下の名前で呼んでもいいですか?」夫を下の名前で呼びたがる女性。2週間後の朝、笑えなくなった出来事とは
お茶に招いた日、同じことを三回聞かれた
四十代になってから、子どもを通して知り合う人が増えた。
私にも親しくしている友人が一人いて、その友人とよく一緒にいたのが彼女だった。
よく笑う人で、会えば気さくに話しかけてくれる。ある日の帰り道、「今度、もう少しゆっくり話したいですね」と言われ、次の週にうちへ招くことにした。
「やっとゆっくり話せますね。前から、もっと話してみたかったんです」
「園だとなかなか落ち着かないですもんね」
お茶を出すと、彼女は棚に飾ってある家族写真に目を留めた。
「ご主人と仲いいんですね。いいなあ」
「そんなことないですよ。写真だからそう見えるだけです」
笑って答えると、今度は夫についていくつか聞かれた。
「ご主人、下のお名前は?」
特に深く考えずに答えると、彼女はその名前を一度口にしてから言った。
「下の名前で呼んでもいいですか?」
思わず笑ってしまった。
「えっ、夫を?急にどうしたんですか」
「名字だと、なんだか堅いかなと思って」
「私は名字のほうが自然だと思いますけどね」
それで話は終わったと思っていた。
ところが少しして、彼女はまた聞いてきた。
「やっぱり下の名前で呼んだら変ですか?」
「うーん、私はちょっとびっくりするかも」
そう答えたのに、帰り際、玄関で靴を履きながらもう一度言われた。
「じゃあ、今度会ったら下の名前で呼んでみようかな」
「まだその話してたんですか」
私も笑って返したものの、少しだけ引っかかった。
あとから思えば、その日だけで三回も同じことを聞かれていた。
二週間後、本当にその名前で呼んだ
それから二週間ほど経った朝だった。
夫が駅へ向かう時間に、私は子どもを園へ送るため一緒に家を出た。途中までは同じ道なので、三人で歩いていた。
角を曲がったところで、向こうから彼女が歩いてきた。
「あ、おはようございます」
「おはようございます」
私に挨拶したあと、彼女は夫を見た。
そして、名字ではなく、夫の下の名前に「さん」をつけて呼んだ。
私は思わず彼女の顔を見た。
夫も少し戸惑ったようだったが、「おはようございます」と頭を下げ、そのまま駅へ向かった。
夫と別れたあとも、私は妙に落ち着かなかった。
週末、親しくしている友人にそのことを話してみた。
「ちょっと聞いてもいい?あの人のことなんだけど」
友人は私の顔を見て言った。
「何かあった?」
家に来たときのことと、夫を実際に下の名前で呼んだことを話すと、友人は少し考え込んだ。
「前にも、距離の取り方でちょっと気になったことはあったよ」
「そうなんだ…」
「でも、詳しいことは本人のことだから私からは言わない。ただ、嫌だと思ったら無理に合わせなくていいと思う」
その言葉を聞いて、私も自分が感じた違和感を無理に打ち消さなくていいのだと思った。
それからは、彼女に誘われても外で会うようにした。
一度、「またおじゃましてもいいですか?」と聞かれたときも、
「今度は外でお茶しませんか。そのほうがゆっくり話せるし」
と返した。
「そっか。じゃあ、そうしましょう」
彼女もそれ以上は何も言わなかった。
今でも顔を合わせれば普通に挨拶をする。ただ、仲よくなったからといって、相手の距離感にすべて合わせる必要はない。あの日から、そう考えるようになった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














