「昨日、買い物してたでしょ」休日の予定を何度も聞いてきた同僚。気まずさを覚悟して私が伝えたひと言
聞かれるたびに、少しずつ気になっていった
四十代でパートに出るようになって、いちばん親しくしていたのが同年代の女性でした。休憩の時間が重なることが多く、話しやすくて、初めのうちは会うのが楽しみなくらいでした。
少し気になったのは、ある休みの翌日です。
家族と、車で少し走った先の大きな店へ出かけた日のことを、その人が知っていました。職場では誰にも話していなかった一日でした。
「昨日さ、買い物してたでしょ。荷物いっぱい持ってたよね」
思わず顔を上げました。
「え…どこかで会った?」
「ううん。たまたま見かけたの。声かけようかなって思ったんだけど、家族と一緒だったから」
「ああ、そうだったんだ」
「すごい偶然だよね。私もびっくりした」
そのときは、私も「そんなことあるんだね」と笑いました。本当に偶然だったのでしょう。それでも、なぜか少しだけ引っかかるものが残りました。
それから数日後、朝礼が終わったところで声をかけられました。
「ねえ、今度の休み、家にいるの?」
「うーん、まだ分からないかな」
曖昧に答えて、その場を離れました。
ところが休憩室でも、また同じように聞かれました。
「休みの日、どこか行くの?」
「まだ何も決めてないよ」
「そっか」
それで終わったと思っていたのですが、退勤するとき、その人がまた声をかけてきました。
「ねえ、今度の休みって、結局家にいるの?」
三度目には、さすがにすぐ返事が出ませんでした。
「…どうだろう。まだ分からないかな」
相手に悪気があるようには見えません。ただ、「どうしてそんなに知りたいんだろう」と思うと、家に帰ってからも気になりました。
秋の朝、初めて自分から線を引いた
次の出勤日は、風の冷たい秋の朝でした。
休憩室で二人になったとき、私は湯呑みに手を添えながら、思い切って口を開きました。
「あのさ、ちょっといい?」
「うん。どうしたの?」
「私、これから休みの日の予定って、あんまり話さないことにしようかなって」
その人は少し驚いたように私を見ました。
「え…私、何か聞きすぎた?」
声が少し小さくなりました。
「うん…この前、何回か聞かれたでしょう。私が気にしすぎなのかもしれないけど、ちょっと落ち着かなくなっちゃって」
「あ…ごめん。そんなつもりじゃなかったんだけど」
「うん。それは分かってる」
「ただ、話のつもりで聞いてただけで……嫌だったなら、ごめんね」
「私も、もっと早く言えばよかった」
少しだけ気まずい沈黙がありました。
やがてその人が湯呑みを持ち上げ、小さく息を吐きました。
「分かった。じゃあ、もう聞かないようにするね」
「ありがとう」
それだけで話は終わりました。
その日から、本当に休みの日の予定を聞かれることはなくなりました。
売り場では今までどおり並んで品出しをしましたし、仕事の相談も普通にしました。ただ以前のように、お互いの私生活まで細かく話すことは減りました。
最初は、こんなことを言ったら気まずくなるかもしれないと思っていました。でも、少し距離ができたことで、かえって仕事中は気楽に話せるようになった気がします。
相手に悪気がなくても、自分が苦しくなるほど合わせ続ける必要はない。あの秋の朝に一度だけ言葉にしたことで、私はようやくそう思えるようになりました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














