「え?朝飯食べてるだけですけど」電車でハンバーガーを2個食べ続けた若者。だが、近くの乗客が窓を開けた結果
始発の車両で開いた2つ目の包み
通勤で毎朝使っていた電車は、始発の駅から出ていた。座って行けるように早めにホームへ向かい、発車までの時間を座席でぼんやり過ごすのが、あの頃の私の朝だった。
その朝も、乗りこんだときの車内はまだがらんとしていた。
けれど発車が近づくにつれて、通勤かばんを抱えた人たちが次々に入ってきて、つり革の前にも人が立ちはじめていた。
私の向かい側では、20代くらいの若い男性が紙袋を膝にのせていた。
取り出したのはハンバーガーで、あっという間に1個を食べ終えると、袋からもう1個を取り出して包みを開いた。
においはかなり強く感じられた。
人が増えてきた車内では、なかなか逃げていかない。私は気になって、そっとハンカチを鼻元へ当てた。
若者の隣には、グレーのコートを着た年配の男性が座っていた。
最初は黙って前を向いていたが、2個目を食べ始めたところで、ためらうように若者へ顔を向けた。
「すみません。ちょっと、においがこもってまして…」
若者は食べる手を止め、眉を寄せた。
「え?朝飯食べてるだけですけど」
「ええ、それは分かるんですけどね」
男性が困ったように返すと、若者は少し声を強くした。
「別にいいじゃないですか。朝ごはんくらい、どこで食べても自由でしょ」
男性はすぐには言い返さなかった。一度視線を落としてから、静かな声で続けた。
「ただ、周りの迷惑を考えてください」
若者は何も言わず、手にしたハンバーガーへ視線を戻した。
近くの乗客が開けた窓
少し気まずい空気が流れた。
すると、若者から少し離れた席に座っていた女性が振り返り、近くの窓に手をかけた。
「ちょっと空気、入れますね」
窓が少し開くと、冷たい朝の空気が車内へ流れこんできた。
「あ、すみません。ありがとうございます」
年配の男性が頭を下げると、女性は「いえ」とだけ返した。
若者は開いた窓をちらりと見たあと、周囲にも目を向けた。立っている人の中には、顔をそむけている人もいた。
しばらくして、若者は小さく息を吐き、食べかけのハンバーガーを包み直した。
「…分かりました。しまいます」
少し不満そうな声ではあったが、先ほどまでの強い口調ではなかった。
年配の男性も、「すみませんね」と短く返しただけだった。
やがて発車のベルが鳴り、ドアが閉まった。電車が走り出すと、窓から入る風で車内に残っていたにおいも少しずつ薄れていった。
その晩、夕食を食べながら夫にこの話をした。
「今朝ね、電車の中でハンバーガーを2個続けて食べてる人がいたの」
「朝の電車で? それは結構においそうだね」
「隣の人が声をかけたんだけど、最初は『自由でしょ』ってちょっと怒ってて」
「まあ、注意されたらムッとする人もいるか」
「でも最後はちゃんとしまってたよ」
「そっか。それならまだよかったね」
大きな言い争いになったわけではない。ただ、混み始めた朝の車内で、それぞれが少しずつ周囲を気にしたことで、その場は静かに収まった。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














