「ママ、下から音がする…」昼寝中の5歳息子が怯えた下の階からの音。天井をたたいていた下の住人が、1か月後に息子へかけた一言
その日のうちに2度、床の下から響いた音
朝ごはんのあと、5歳の息子が廊下を走り出しそうになった。
私はしゃがんで目を合わせた。
「走るのは公園でね。おうちの中は歩こうね」
息子は「うん」とうなずき、ゆっくり歩き始めた。しばらくして、また小走りになりかけたので、私はもう一度声をかけた。
「さっきの約束、覚えてる?」
「おうちは歩く」
そう言って、今度はつま先でそろそろと歩いてみせた。遊ぶのもマットの上だけにしようと、二人で決めていた。
その朝、玄関先で下の階に住む60代くらいの男性に呼び止められた。
「子どもさんの音なんだけど、ちょっと気になっててね」
突然のことで驚いたが、私は頭を下げた。
「すみません。家の中では走らないように言っているんですが、もっと気をつけます」
部屋に戻ってからも気になり、その日はなるべく静かに過ごすことにした。
ところが、息子が昼寝の布団に入って十分ほどしたころ、床の下から突然、ドン、ドンと重い音が響いた。
息子がびくっと体を起こした。
「ママ、下から音がする…」
そのまま私の膝に顔をうずめた。
さらに夕方、二人で静かに絵本を読んでいたときにも、また同じ音が響いた。
息子はそのたびに床を見つめ、その晩は私の手を握ったまま眠った。
管理会社から伝えてもらうことにした
翌朝、私は音がした時刻と、そのとき息子が何をしていたかを書き出した。
昼寝中と、絵本を読んでいた時間。短いメモだったが、それを持って管理会社の窓口へ向かった。
「昨日、下から2回たたくような音がしたんです。朝から息子にも走らないように言い聞かせていて、そのときも走ってはいませんでした」
話しているうちに、声が少し震えた。
担当の40代くらいの女性は、メモを見ながら確認した。
「昼寝をしていたときと、絵本を読んでいたときですね」
「はい。本人も怖がってしまって…」
女性はうなずいた。
「分かりました。住人同士で直接やり取りすると、かえってこじれることもあります。こちらからお話ししますね」
その週末、担当者は下の階を訪ねた。
夕方に電話をもらい、担当者から聞いたところでは、こちらも生活音に気をつけていることを説明したうえで、天井をたたくようなことは控えてほしいと伝えてくれたという。
「音が気になるときは、直接伝えるのではなく、管理会社に連絡してくださいとお願いしました」
「相手の方は、何と…?」
「分かりました、とおっしゃっていました。こちらでも様子を見ます」
電話を切っても、すぐには安心できなかった。
けれど、それ以降、床の下からあの重い音が響くことはなかった。
少しずつ息子も怖がらなくなり、昼寝の布団にも一人で入れるようになった。
それからひと月ほどたった夕方、エレベーターに下の階の男性が乗ってきた。
息子は私の服のすそをつかみ、男性を見上げていた。
扉が開く直前、男性は少しかがんだ。
「静かにしてくれて、ありがとうな」
息子は少し間を置いてから、大きくうなずいた。
男性も小さく笑い、そのままエレベーターを降りていった。
完全に気まずさが消えたわけではない。それでも、直接言い合うのではなく管理会社に相談したことで、息子が怖がらずに過ごせる日常が戻ったことに、私はほっとした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














