「電車で席を指定する人、初めて見た」若い男性に端の席を譲ってもらった私。だが、降りたあと娘一家に笑われた理由
端の席は窮屈だと思っていた私
私は昔から、電車の端の席が苦手でした。
仕切りに肩が当たるうえ、そばに立つ人の荷物が気になることもあります。
端の席は窮屈な場所だと、ずっと思い込んでいたのです。
だから空いていても、端の席は若い人に任せてきました。
帰省していた娘夫婦と小学生の孫と一緒に、昼の電車で出かけた日のことです。
乗り込むと、長い座席で空いていたのは端から2つ目の席だけ。
端には若い男性が座っていました。
「お母さん、あそこ空いてるよ。座ったら?」
娘に言われて席を見ると、男性は荷物を膝に抱え直し、仕切りのほうへ体を寄せてくれました。
隣に座りやすいよう、気を使ってくれたのでしょう。
ところが私は、その姿を見て別のことが気になってしまいました。
男性は、私が窮屈だと思っている端の席に座っています。
せっかく親切にしてくれたのだから、私も何かできないだろうか。
そう考えた私は、男性の前に立って声をかけました。
「すみません。端には私が座りますから、どうぞ真ん中のほうへ」
「えっ……あ、はい」
男性は少し驚いた様子でしたが、荷物を持ち上げ、すぐ隣の空席へ移ってくれました。
私は空いた端の席に腰を下ろしました。
これなら男性も少しは楽に座れるはず。そう思って、ひとり満足していたのです。
ホームで娘一家に笑われた理由
ところが、少し離れた場所に立っていた娘一家の様子が妙でした。
娘の夫は天井を見上げ、娘はうつむいて肩を震わせています。孫まで両手で口をふさいでいました。
私が目を合わせようとしても、なぜか三人ともこちらを見ようとしません。
電車を降りるとき、私は男性に声をかけました。
「ありがとうございました。おかげさまで楽に座れました」
男性は少し困ったように笑い、小さく会釈してくれました。
そしてホームに降りた途端、娘たちがいっせいに笑い出したのです。
「ちょっと、なによ。みんなして!」
娘は目元を拭いながら言いました。
「だって、お母さん!電車で席を指定する人、初めて見た」
「指定って……。私は遠慮して、窮屈な端に座っただけよ」
すると、今度は娘の夫が笑いをこらえながら教えてくれました。
「お義母さん、端の席が好きな人も多いんですよ。仕切りに寄りかかれますし、隣に人が座るのも片側だけですから」
「えっ、そうなの?」
私は思わず聞き返しました。
自分が窮屈だと思っていた席を、ほかの人も同じように感じていると信じていたのです。
しかも、親切に隣を空けてくれた男性に、わざわざ席を移ってもらっていました。
「あら……じゃあ私、余計なことしちゃったのね」
そう言うと、娘たちはまた笑い出しました。
恥ずかしさで顔が熱くなりましたが、考えてみると自分でもおかしくなり、最後は私も一緒に笑ってしまいました。
帰りの電車でも、端の席がひとつ空いていました。
すると孫が私の袖を引き、小声でささやいたのです。
「おばあちゃん、今日は誰にも席を頼まないでね」
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














