「話を適当に聞くな」相づちを変えても怒鳴る電話の男性客。上司が同じ「ええ」で対応すると、態度が変わった理由
「ええ」と返しただけで怒鳴り始めた男性客
20代前半のころ、私は短期のアルバイトで、給付金の手続きに関する電話対応をしていました。
昼どきのオフィスでは、周りのアルバイトもヘッドセットをつけ、次々とかかってくる問い合わせに対応していました。
研修で教わったことのひとつが、電話中の相づちです。
マニュアルでは「ええ」か「はい」を使うように指導されており、私は普段「ええ」を使っていました。
ある日、男性のお客様から電話がかかってきました。
男性は、給付金の申請書類をどこまで直せばよいのか分からず、何度問い合わせても話が進まないことに不満を感じている様子でした。
「もうさ、何回聞けばいいんだよ。いいかげんにしてほしいんだけど」
「ええ、ご不便をおかけして申し訳ございません」
すると突然、男性の声が大きくなりました。
「は?なんだ、その返事。客に向かってタメ口か?」
思わず肩が跳ねました。研修で教わった通りに返事をしたつもりだったので、何がいけなかったのか分かりません。
私は慌てて相づちを変えました。
「はい。大変失礼いたしました」
「だからさ、話を適当に聞くなって言ってるんだよ!」
「はい」と答えても、今度はその返事が気に入らないようでした。
男性は私の言葉を遮っては、手続きへの不満を繰り返します。
何を言っても怒られるような気がして、次第に言葉が出なくなりました。悔しさで涙が出そうになりながら、私は必死に声を落ち着かせていました。
上司が使ったのは、私と同じ相づちだった
このままでは対応できないと思い、私は電話を保留にして、通りかかった女性の上司に助けを求めました。
事情を説明すると、ベテランの上司は私の隣に椅子を寄せました。
「分かった。私が代わるね。隣で聞いてて」
上司は私からヘッドセットを受け取り、電話の保留を解除しました。
「大変お待たせいたしました。代わってお話をうかがいます」
私は隣に座ったまま、上司の対応を見守りました。
すると、上司の口から聞こえてきたのは、意外な言葉でした。
「ええ、ええ。そうだったんですね」
思わず上司の顔を見ました。
それは、先ほど私が怒鳴られたのと同じ「ええ」という相づちだったのです。
ところが、上司は少しも慌てません。男性が話している間は口を挟まず、落ち着いた声で短く相づちを打っています。
ヘッドセットからは、ときおり男性の大きな声が漏れてきました。
「だいたい、さっきの…」
男性が前の対応について何か言いかけたのが聞こえましたが、上司はそのまま静かに話を聞いていました。
しばらくすると、漏れ聞こえていた怒鳴り声は次第に小さくなっていきました。
「ええ、お話は分かりました。それでは、手続きを順番にご説明しますね」
上司は相手を急かすことなく、ひとつずつ説明していきました。
その後、男性が「ええ」という相づちを責めるような声は聞こえてきませんでした。上司は最後まで穏やかに対応し、電話を終えました。
通路の向こうにいたアルバイトの人が、こちらをちらりと見て、小さくうなずきました。
上司はヘッドセットを外し、私に返してくれました。
「大丈夫?さっきの相づち、間違ってなかったよ」
「でも、何を言っても怒られてしまって……」
「そういうときもあるよ。焦らず、相手の話を聞いてから答えれば大丈夫だからね」
その言葉を聞いて、ようやく肩の力が抜けました。
同じ「ええ」という言葉でも、落ち着いた声で相手の話を受け止める上司の姿は、私とはまるで違って見えました。
私はもう一度ヘッドセットをつけ直し、点滅していた次の電話をつなぎました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














