「次もこの書式でお願いします」親戚にお金を貸した私。毎月届いた手書きの返済明細、最後の一枚に思わず笑った理由
借用書を差し出すと、親戚が意外な反応を見せた
数年前、親戚の男性からお金を貸してほしいと相談されたことがあります。
急な出費が重なり、生活費が足りなくなってしまったというのです。
長い付き合いのある親戚だったので、断るつもりはありませんでした。
ただ、貸す金額は決して小さくありません。
家族からも「身内同士のお金の貸し借りこそ、慎重にしたほうがいい」と言われていました。
そこで私は、返済する時期と方法を記した借用書を用意しました。
しかし、いざ渡すとなると、どうしても気が重くなります。
「身内なのに、そこまでするのか」と怒られるかもしれない。
信用していないと思われたら、これまでの関係にも影響するのではないか。
そんな不安を抱えたまま、親戚が家に来る日を迎えました。
その夜、居間のテーブルをはさんで向かい合い、私は恐る恐る借用書を差し出しました。
「あの……念のため、これを書いてもらえないかな」
「おっ、借用書か」
その言葉に、私は思わず身構えました。
ところが親戚は、紙をのぞき込むと、うれしそうに言ったのです。
「いいね、これ。返す日がはっきりしてると、こっちも気が楽だよ」
「えっ、そうなの?」
「うん。分かりやすくていいよ」
親戚は嫌な顔ひとつせず署名し、借用書を返してくれました。
怒られると思い込んでいた私は、すっかり拍子抜けしてしまいました。
毎月届く手書きの明細。最後の一枚に書かれていたのは
それから親戚は、給料日が来るたびに約束どおりお金を振り込んでくれました。
さらに驚いたのは、振り込みのたびに手書きの返済明細まで郵送してくれたことです。
封筒には、今月返済した金額と残りの金額が書かれた紙が入っていました。
罫線は定規できれいに引かれ、いちばん下には短いあいさつまで添えられています。
ある日、届いた封筒を開けていると、妻が声をかけてきました。
「また来てる。今月は何て書いてある?」
「『朝晩冷えるようになりました』だって」
「ふふっ、時候のあいさつまであるんだね」
最初はその几帳面さに驚いていましたが、いつしか私は、封筒が届くのを楽しみにするようになっていました。
返済額を確認するだけでなく、今月はどんなひと言が書かれているのか気になっていたのです。
そして、ついに最後の返済の日を迎えました。
いつものように届いた封筒を、私は居間のテーブルで開けました。
これまでの明細も並べてみると、同じ書式の紙に、毎月少しずつ減っていく残額が記されています。
最後の一枚には「全額返済いたしました」と書かれていました。
ところが、その下には、ひときわ大きな字でこんな一文が添えられていたのです。
「次もこの書式でお願いします」
「……次も?」
私は思わず、あの夜に渡した借用書を思い出しました。
親戚は、返す日がはっきりしているから気が楽だと、あの書類をずいぶん気に入っていました。
もしかして、また借りることがあったら同じ借用書を使いたい、という冗談なのでしょうか。
そう考えると、つい笑いがこみ上げてきました。
台所にいた妻が、不思議そうに顔をのぞかせました。
「どうしたの、急に?」
「いや、常連さんになるつもりらしい」
借用書を差し出すだけで、あんなに緊張していた自分が懐かしく感じられました。
お金の貸し借りは、曖昧にしないほうがいい。そう考えて用意した一枚の借用書を、親戚も前向きに受け取ってくれたのです。
毎月の丁寧な返済と、最後に添えられた冗談めいたひと言。
あのとき思い切って借用書を渡してよかったと、今では思っています。
最後の返済明細は、今も引き出しに大切にしまってあります。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














