「また少しだけお願いできる?」30年以上、実家にお金を送り続けた私が、給料日後の母からの電話に出られなくなった理由
実家からの着信に手が止まる
昼、台所で洗い物をしていると、テーブルに置いた携帯電話が鳴りました。
画面には「実家」の文字。
手を伸ばしかけた私は、思わず動きを止めました。
もう仕送りはしていません。それなのに、今も電話に出るのが怖いのです。
呼び出し音を聞いているだけで、母とのやり取りが頭に浮かんできます。
働き始めてから30年以上、私は両親やきょうだいに、生活費が足りないと頼まれるたび、お金を送ってきました。
家族なのだから助けるのが当然だと思っていました。ボーナスもほとんど自分のためには使わず、借用書を書いてもらったことも、お金を返してもらったこともありません。
母はいつも、何げない話から切り出しました。
「元気にしてる?声が聞きたくてね」
「うん、元気だよ。そっちは?」
「それがね、今月ちょっと厳しくて…また少しだけお願いできる?」
「……分かった。送っておくね」
「ありがとう。来月にはちゃんと返すから」
「うん。体に気をつけてね」
本当は断りたいと思うこともありました。でも、母の声を聞くと、なかなか言い出せませんでした。
結局、翌月になってもお金は返ってきません。それでも次に電話がかかってくると、私はまた同じ返事をしてしまうのです。
30年以上の振込記録を見て気づいたこと
ある夜、居間のテーブルに古い通帳と振込の控えを全部広げ、日付順に並べてみました。
合計を出した瞬間、数字から目が離せなくなりました。
家が建つほどの額になっていたのです。
これだけあれば、自分の老後の心配も少しは減ったのに。そう思うと、胸が苦しくなりました。
そして、もう一つ気になったのが振込の日付でした。どれも給料日やボーナスのすぐあとだったのです。
「こんなに、ぴったり…」
転職して給料日が変わった年の控えも探しました。すると、その翌月には新しい給料日の直後に家族から電話があり、振り込んでいたことを思い出しました。
家族は、私の給料日を知っていたのでしょうか。
偶然だったのかもしれません。振込日には私自身の都合もあったはずです。
それでも、いつもお金が入ったばかりの時期に頼まれ、何十年も応じてきたことが、改めて重く感じられました。
私は振込に使っていた口座を変えました。そして、もうお金を送るのはやめました。
その後も実家から何度か電話が来ましたが、出ずにいました。
そして今日も、給料日のすぐあとの昼です。
携帯電話はまだ鳴っています。出れば、またあの言葉が聞こえてきそうです。
「また少しだけお願いできる?」
もうお金は送らないと決めたはずなのに、画面の「実家」の文字を見るだけで、体が動かなくなります。
私は携帯電話に伸ばしかけた手を止めたまま、着信が切れるまで、ただ画面を見つめていました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














