tend Editorial Team

2026.10.20(Tue)

「既製品は邪魔。机からどかして」手作りのかんざしを通販品と言い、机から外す幹事。だが、2分後に頭を下げた

「既製品は邪魔。机からどかして」手作りのかんざしを通販品と言い、机から外す幹事。だが、2分後に頭を下げた

「既製品は邪魔。机からどかして」手作りのかんざしを通販品と言い、机から外す幹事。だが、2分後に頭を下げた

開場10分前の販売の机

開場10分前、幹事は私の箱を机からどかしてと言いました

「既製品は邪魔。机からどかして。」

公民館まつりの開場まで、あと10分。

ロビーに設けられた販売用の机の前で、手芸サークルの先生、販売担当の幹事、私の3人が作品の並べ方を確認していた時です。幹事が、机のまん中に置かれた私の白い箱を指さしました。

箱の中にあるのは、私が水引で作った梅結びのかんざしです。毎年このまつりに出品しており、今年も自宅で時間をかけて仕上げた作品でした。

「全部、私が家で結んだ物です。」

幹事は、私が結ぶところを誰も見ていないと言いました

幹事は、私が結ぶところを誰も見ていないと言いました

「結ぶところ、誰も見てない。」

「ここでは、一度も結んだことがない。」

幹事は先生に向き直り、『水引を10年やっている私が見れば分かります』と続けました。

去年のまつりでは、私のかんざしが昼前に売り切れた一方、幹事の水引の飾りは売れ残っていました。それ以来、幹事は私の作品に厳しい目を向けるようになっていたのです。

今年の販売準備は幹事が中心となって進めており、先生も作品の配置を任せていました。

幹事は、通販で同じかんざしを見たと先生に言いました

幹事は、通販で同じかんざしを見たと先生に言いました

幹事は箱のふたを開け、白と金のかんざしを1本取り出して、先生の前にかざしました。

「通販で、同じ物を見ました。」

「輪が5つとも、ぴったり同じ。」

サークルでは普段、先生から刺しゅうを習っていますが、まつりでは各自が家で作った手芸作品も販売しています。

水引を扱うのは幹事と私だけで、私はいつも家でひとりで結んでいました。

そのため、先生に制作している姿を見せたことはありません。

先生は幹事の主張に戸惑っている様子でした。私も手作りだと説明しましたが、言葉だけでは疑いを晴らせそうにありません。

白と金の輪が、幹事の指の先で揺れていました。

まん中に置かれた幹事のかご

幹事は、机のまん中に自分の飾りのかごを置きました

幹事は、机のまん中に自分の飾りのかごを置きました

幹事はかんざしを箱に戻してふたを閉め、箱を机の下へ下ろしました。

そして、空いたまん中に自分の金と紫の飾りが入ったかごを置いたのです。

「まん中には、私の飾り。」

先生も眉を寄せて、私を見ています。

手作りだという私の説明を信じてよいのか、迷っているようでした。

先生にまで疑われたまま、まつりを迎えたくありませんでした。

「先生、2分だけください。」

包装用の水引1本から、2分ほどで梅結びを結びました

包装用の水引1本から、2分ほどで梅結びを結びました

家の外で、水引を結んだことは一度もありません。

人前では緊張して手が震えるのではないかと思い、これまで結んでみせる機会を避けていました。

しかし、ここで何もせずに引き下がるわけにはいきません。

机の左端には、購入された品を包むために用意された、サークルの赤い水引がありました。

『一本、お借りします』と先生に断り、そこから1本取りました。

指に掛けて輪を作り、2人の目の前で、ひと続きに結んでいきます。幸い、手は震えませんでした。

2分ほどで、赤い梅結びが私の手のひらにのりました。5つの輪は、同じ大きさにそろっています。

「1つだけなら、練習すれば結べる!」

「何本でも、同じ輪に結べます。」

私は手のひらの梅結びを先生に差し出しました。

ただ、1つ結んでみせただけでは、箱に入ったかんざしをすべて自分で作った証明にはなりません。

そこで、家で制作していた時に撮影した写真も見せることにしました。色や結び目のバランスを確認するため、制作途中の写真を何枚かスマートフォンに残していたのです。

幹事は、戻した私の箱の前で深く頭を下げました

幹事は、戻した私の箱の前で深く頭を下げました

先生は私の手のひらの梅結びに顔を寄せて見たあと、スマートフォンの写真も確認しました。

そこには、白と金の水引を結んでいる途中の様子や、かんざしの金具に取り付ける前の作品が写っています。

先生は実物と写真を見比べ、納得した様子でうなずきました。そして、まん中に置かれた幹事のかごへ目を移しました。

私が2本目の水引に手を伸ばすと、先生の視線に気づいた幹事が、『もう、いいです』と止めました。

先生から、通販で見たという商品の画像や販売先を確認されると、幹事は何も示せませんでした。

結局、通販で同じ物を見たというのは作り話だったと認めたのです。

幹事は自分のかごを脇へずらし、机の下から私の箱を取り出して、まん中へ戻しました。

「売り切れるのが、悔しかったんです。」

去年、自分の作品が売れ残ったことが気になり、私の作品を目立つ場所に置きたくなかったようです。

幹事は、戻した白い箱の前で、私に深く頭を下げました。

先生も事情を理解してくれ、私のかんざしは予定どおり販売されることになりました。

疑いを晴らせたことにほっとすると同時に、あの場で思い切って水引を結んでよかったと思いました。


※本記事はフィクションです。物語の登場人物、団体、名称、および事件はすべて架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.10.21(Wed)

「場所は決まってないですよね?」運動会で後ろの視界を遮った女性。だが、本部の放送を聞いてカメラを下ろした瞬間
tend Editorial Team

NEW 2026.10.21(Wed)

「場所取りしろ、新人の仕事だ」雨の中に私を残し、部長には朝から一緒だったと言う課長。私の一言で頭を下げた
tend Editorial Team

NEW 2026.10.21(Wed)

「撮影席は着席でお願いします」娘の音楽発表会で最前列の前に割り込んだ母親。だが、PTA役員の言葉に振り返ると
tend Editorial Team

RECOMMEND

2025.12.23(Tue)

「結婚指輪失くした」と謝る夫。しかし、近所の質屋で見覚えのある指輪が…夫を問い詰めた結果【短編小説】
tend Editorial Team

2025.12.23(Tue)

「手作りクッキーなんて菌だらけ」と捨てる潔癖ママ。作った人物が我が子だと知り最悪の空気に【短編小説】
tend Editorial Team

2025.12.16(Tue)

朝倉未来が不意打ちビンタで相手失神という騒動に厳罰処分を下したBreakingDownの舞台裏と来年以降の地方進出構想
tend Editorial Team