「それ、要るから置いてあるのよ」叔母の家でも勝手に置物を持ち帰ろうとした親戚。だが、続く一言で笑顔が消えた瞬間
鳴るたびに身構えた電話
以前、電話が鳴るたびに身構えていた時期がありました。
相手は、母方の親戚の女性です。
大きなトラブルがあったわけではありません。ただ、お金や物に関する小さな出来事が何度も重なり、すっかり苦手になっていたのです。
親戚は、自分の用事があると電話をかけてきます。
ところが、私が出ると決まってこう言うのです。
「電話代がもったいないから、そっちからかけて」
「えっ、今かけてきたばかりなのに……」
そう言いかけても、すでに電話は切れています。
仕方なくかけ直すと、親戚の頼みごとを長々と聞かされるのでした。
お金についても同じでした。
一緒に食事をしたときやバスに乗るときなど、支払いの場面になると私に頼ってきます。
「ごめん、細かいのがないの。ちょっと立て替えておいてくれる?」
「あとで返してもらえる?」
「もちろんよ」
そう言うのですが、あとから返してもらえたことはありません。
さらに困ったのは、私の家に来たときのことです。
居間にいた親戚が、棚に飾ってあった花瓶を手に取りました。
「これ、使ってないでしょ。もらうわね」
「えっ、待って。それ、気に入って飾ってるんだけど」
「でも、飾ってるだけじゃない。いいでしょ?」
「いや、よくないんだけど…」
私が困っているのに、親戚は笑いながら花瓶を持ったまま帰ろうとします。
あまりに当然のような態度で、どう言えばいいのか分からなくなってしまいました。
結局、そのまま持ち帰られてしまい、私はもっとはっきり断ればよかったと後悔しました。
叔母の家で止まった笑い声
それからしばらくして、母の妹にあたる叔母の家に親族が集まりました。
昼食を終え、和室でお茶を飲みながら近況を話していたときです。
例の親戚が棚の前に立ち、小さな焼き物の置物を手に取りました。
「あら、これいいわね。もう要らないでしょ? もらっていくわね」
また同じことを言っていると思い、私は思わず親戚の手元を見つめました。
すると、叔母が静かに口を開きました。
「それ、要るから置いてあるのよ。戻してくれる?」
「ええ? そんな怖い顔しなくても。ちょっと言ってみただけじゃない」
親戚は笑ってごまかそうとしましたが、叔母は表情を変えません。
「それと、前に立て替えた分も、そろそろ返してね」
その瞬間、親戚の笑顔が消えました。
「えっ、今その話する?」
「だって、まだ返してもらってないもの」
叔母の落ち着いた声を聞いて、私も思い切って口を開きました。
「私も、立て替えた分がそのままです」
すると、向かいに座っていたほかの親戚たちからも声が上がりました。
「ああ、私もまだ返してもらってないわ」
「うちもあるのよ」
話を聞くと、食事の席や駅の窓口などで、ほかの親戚も同じように支払いを立て替えていたことが分かりました。
親戚は周りを見回しましたが、誰も笑っていません。
「そんな、みんなで言わなくても……」
そうつぶやくと、持っていた置物を棚に戻しました。
叔母はそれ以上責めることもなく、急須からお茶をつぎ足しました。親戚も席に戻りましたが、そのあとはほとんど口を開きませんでした。
あの日を境に、少なくとも私に対して、親戚が「立て替えておいて」と頼んでくることはなくなりました。家に来ても、物を勝手に持ち帰ることはありません。
以前は電話が鳴るだけで嫌な気持ちになっていましたが、今では落ち着いて画面を確認できるようになりました。
私もあのとき、叔母のようにはっきり断れていたらよかったのかもしれません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














