「派手な衣装で店頭立てばいいんじゃないか」客足ガタ落ちの美容院で集客アイデアを出した店長→冗談ではない口調に背筋が凍った
朝礼で店長が口にした集客アイデア
三十代になって何年か経った頃、私は街なかの美容院でスタイリストをしていました。
指名も少しずつ増えて、仕事に手応えを感じ始めていた時期です。
その美容院では、ある時を境に客足が一気に細りました。
新規予約の電話が鳴らない日が続き、午前の予約表が真っ白なまま昼を迎えることもあったのです。
スタッフ同士で顔を見合わせて、ため息のような笑顔を作ることが増えていきました。
朝礼の場で、店長が腕を組みながらアイデアを並べ始めました。
チラシの撒き直し、近隣店舗との連携、メニューの見直し。どれも頷けるものでした。
「派手な衣装で店頭立てばいいんじゃないか」
その流れの中で、店長が一言、軽い調子で投げてきたのです。
具体的にどんな衣装かと聞き返すと、身体のラインが強調される、肌が見える服を着てほしい、と。
その場にいた女性スタッフは全員、思わず顔を見合わせていました。
笑って流すこともできなかった発想
店長の表情には、悪意のかけらも見えません。むしろ、本当に良いアイデアだと思って提案している顔つきです。
だからこそ、こちらは反応に困ってしまいました。
(冗談だとしたら笑い飛ばせばいい、本気だとしたら、これは線を越えた話なのでは)
頭の中で、判断のものさしが揺れ続けました。お店を続けたい気持ちは、私にだってあります。指名してくれているお客様のためにも、店をたたむような事態は避けたい。
けれど、客足を取り戻すために女性スタッフの服装を変えるという発想そのものに、私はどうしても素直に頷けませんでした。
仕事の腕や接客で勝負したくて、この業界に入ったはずだったからです。指名してくれるお客様も、私の技術を見て通ってくれているはずでした。
「ちょっと、今日のところは持ち帰らせてください」
同じ朝礼にいた先輩の女性スタイリストが、表情を硬くしたまま声を絞り出しました。
場の空気がそこでようやく動いて、店長は「まあ、考えておいて」と言葉を濁します。それから、その提案が再び口にされることはありませんでした。
実行されなかったから、何も問題は起きていない。
表向きはそういう整理になっています。それでも、店長があの場面で迷いなくその一言を選んだという事実だけは、今もどうしても胸の奥に引っかかったままなのです。
困った時にまず女性の見た目を頼ろうとする発想に、自分の働く先が立っていたという気づきは、簡単には消えてくれませんでした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














