「直接自分で話せば?」カラオケのある居酒屋でママ経由で迫ってきた男→50代の女性が静かに言い返した夜の話
ひとりの夜が好きだった
カラオケが置いてある小さな居酒屋で、1人でゆっくり飲む時間が好きだ。誰に気を遣うこともなく、好きな歌を歌って好きなペースで飲める。それが50代になった私の大切な息抜きだった。
その夜も焼酎を片手にカウンターに腰を落ち着け、のんびりと過ごしていた。常連客が数人いたが、それぞれが自分の時間を楽しんでいて、ちょうどいい距離感だった。店内に流れる音楽を聴きながら、2、3曲歌って飲む。そういう夜が私は好きだった。
気がつくと、カウンターの端に男性がひとり腰を下ろしていた。こちらをちらちらと見ているのには気づいていたが、とくに気に留めなかった。若いころなら少し緊張したかもしれないが、50代になった今は、そういう視線に動じなくなっていた。
ママからの代理の言葉
飲み終えて立ち上がったとき、店のママが急ぎ足で追いかけてきた。
「あちらの方があなたと話したいって言ってるのよ」
ニコニコしながら代わりに伝えてくる。カウンターの男性はこちらを見ながら、少し照れているような顔をしていた。年齢は私と変わらないくらいだろうか。
私はその場で少し考えた。話しかけたいなら、なぜ自分で来ないのか。人を使って間接的に伝えるというのは、どういう感覚なのだろう。失礼というより、純粋に不思議だった。もし私がその立場だったら、恥ずかしくても自分で声をかけると思う。
私はそのままカウンターの男性を正面から見た。声を荒げるつもりはなかった。ただ、はっきりと言わなければと思った。
「直接自分で話せば?」
静かだが、はっきりとした声だった。男性の表情がそのまま固まった。ママも黙った。
言い切ったあとの夜道
伝えたいことはまだあった。私はもう一言、続けた。
「人に頼んで話しかけてくるような人に、私は興味がない。それじゃいつまでたっても誰ともうまくいかないよ」
男性は何も言えなかった。ママは苦笑いのまま動かなかった。私は会釈をして、そのまま店を出た。
夜道を歩きながら、胸の中がすっきりしていた。怒っていたわけではなかった。ただ、正しいと思ったことを、正しいタイミングで言えた感覚があった。言い訳も後悔も何もない。足取りが自然と軽くなった。
50代になって気づいたことがある。若いころは曖昧にしてしまっていた場面でも、今は迷わず言葉にできる。怒りからではなく、積み重ねた経験から出てくる率直さだ。相手を傷つけたいわけではなく、ただ正直でいたいだけだ。あの夜もそういう一言だったと思っている。翌週もまた、ひとりで飲みに行った。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














