
理不尽な怒声を浴びせる男性客へ放った毅然たる一言。30年の経験が導き出した、客と店員のあるべき境界線
店内に、突如として低い怒鳴り声が響き渡る。タバコ一つ買うために、なぜ年齢確認のボタンが必要なのか。なぜレジ袋の有無をいちいち聞くのか。関東圏で30年以上、夫婦でコンビニの暖簾を守り続けてきた山川さんが直面したのは、あまりにも一方的な感情の爆発でした。
50代から60代とみられるその男性客は、マニュアル通りの丁寧な対応を火種に、10分近くもレジを占領したといいます。背後には次々と客が並び、不穏な空気がじりじりと膨らんでいく。山川さんの心に、ふと自身の信仰心がよぎる。許しを説くべきか。それとも。葛藤の末に、男性が放った決定的な問い。「お客様は何だ?」山川さんは、震える心を抑えて真っ直ぐに答えました。
「お客様はお客様です。」
このやり取りが報じられると、SNS上では瞬く間に議論の火の手が上がりました。
『店員をサンドバッグだと思っている人が多すぎる。この回答は満点だと思う』
『神様なら、まずその場にふさわしい振る舞いを見せてほしいものだ』
『コンビニの店員さんも同じ人間。敬意を持って接するのが当たり前のマナーじゃないか』
『毅然とした対応がもっと広まれば、理不尽なカスハラも減るはず』
多くの方々は山川さんの勇気に寄り添っていましたが、現場の苦労を察する書き込みも目立ちます。近隣にパチンコ店があるという立地上、負けが込んだ客からの八つ当たりは日常茶飯事だとか。コンビニの仕事は誰にでもできると侮られ、時には存在すら軽んじられる。それでも、かつてアルバイトをしていた若者が結婚の報告に来たり、常連さんから店への愛着を語られたり。そんな小さな光が、山川さんを支えてきました。
最近では本部の掲示ポスターが功を奏し、あからさまな絡みは減ったといいます。しかし、最低賃金の上昇や人手不足など、店を取り巻く壁は年々高くなっているのが現状。老兵は去るのみ。山川さんが漏らしたその言葉には、時代の移り変わりに対する一抹の寂しさと、役割を全うした清々しさが混じり合っています。
私たちはいつの間にか、サービスを享受する側が強者であると錯覚していなかったでしょうか。レジ越しに交わされるのは、単なる金銭の授受ではありません。
山川さんが示した、お客様はお客様という境界線。
それは、互いの尊厳を守るために不可欠な、冷たくも温かい真理のようにも聞こえます。














