イメージ画像(写真ACより引用)
便利さの追求から一転、あえて不便な有線を選ぶ若者が急増中。ハイテクへの静かな抵抗とファッション性が融合した、新たなトレンドの深層に迫る
スマートフォンのイヤホンジャックが姿を消し、誰もが耳に豆のような端末を詰め込んで歩くのが当たり前になりました。しかし、今そんな街の景色に異変が起きています。かつては邪魔者扱いされ、カバンの中で絡まる元凶だったはずの有線イヤホンが、驚くべき復活を遂げているのです。
売上高は年初から二割も増加。一時は時代の波に飲み込まれ、過去の遺物になるかと思われたアイテムが、まさに崖っぷちから生還しました。このブームの火付け役は、皮肉にもデジタルネイティブであるZ世代の若者たちです。彼らにとって、耳元からだらりと垂れ下がる白いコードは、単なる音響機器ではなく、自分を表現するための最新のアクセサリー。世界的なモデルやスターたちが、ハイブランドの服にわざと安価な有線イヤホンを合わせる姿が報じられると、その飾らないスタイルがクールだとして瞬く間に広がりました。
ネット上では、この現象に対してさまざまな意見が飛び交っています。
『ワイヤレスは充電が切れるとただの耳栓。有線ならその心配がないから実は最強。』
『コードが絡まるのも、なんだかアナログな儀式みたいで愛着がわいてくる。』
『高いお金を払って失くしやすいイヤホンを買うより、安くて音がいい有線の方が賢い。』
こうした声からは、行き過ぎたハイテクに対する、ちょっとした疲れが見え隠れします。
実際、使い勝手の面でも有線が見直される理由は少なくありません。大事な電話の最中にバッテリーが切れたり、人混みで接続が途切れてイライラしたりすることもない。接続設定で四苦八苦する姿をオタクっぽいと感じる層にとって、プラグを差し込むだけで完結するシンプルさは、ある種の解放感さえ与えてくれます。
さらに興味深いのは、これが大手IT企業による押し付けがましいアップデートへの、ささやかな反抗として機能している点です。最新こそが正義とされる現代において、あえて古いものを選び取る行為。それは、流行に流されない意志の強さを示しているようにも感じられます。高級ブランドが驚くような価格で独自の有線モデルを発売するなど、ファッション界もこの熱狂を逃すまいと必死です。
不便さを楽しむ余裕。それは、何でも効率よくこなすことを求められる現代人にとって、最も贅沢な遊び心なのかもしれません。絡まったコードを解く指先の時間すら、忙しない日常の中では貴重な一息になる。
耳元から伸びる一本の線は、私たちが忘れかけていたアナログな温もりを、再び繋ぎ止めてくれているようです。














