「昨日のカフェ、1つ後ろの席にいたよ」と無邪気に笑った相手と連絡を絶った日のことを今も思い出す
好意のつもりだったのかもしれない
3回目のデートの帰り際、マッチングアプリで知り合った相手が小さなプレゼントを渡してきた。
ずっと欲しかった限定デザインのアクセサリーだった。
欲しいと彼に話した記憶は一度もない。なのに、正確に選んであった。
嬉しいと思う前に、どこかからの違和感が先に来た。
「なんで知ってるの」と聞いたら、彼は笑った。
「SNS全部見たよ。5年分。好きなもの、ぜんぶ調べた」
アプリのプロフィールに本名も勤め先も載せていない。どこから辿ったのかを考えると、手が冷たくなった。
喜んでほしくてやったのだとわかる。それがまた、どうしようもなく怖かった。
好意と、踏み越えてはいけない線が、彼の中では同じ場所にあるのかもしれないと思った。
後ろの席にいた
それだけでも十分に怖かったのに、彼はさらりと付け加えた。
「昨日のカフェ、1つ後ろの席にいたよ」
前日の行動は何も話していなかった。偶然にしては出来すぎている。
声も掛けずに後ろに座っていたという事実が、ゆっくりと体に染み込んでいった。外で過ごすどの場所にも、彼がいるかもしれないという感覚が生まれた。
「好きすぎて、もっと知りたかっただけ」
屈託のない表情で言った。傷つける気も、脅かす気も、たぶんなかったのだと思う。
だからこそ言葉が出てこなかった。責める言葉も、逃げる言葉も、どこにも見つからなかった。帰りの電車の中で、ずっとスマホを握りしめていた。
振り返る癖がついた
その日の夜に連絡先を消し、アプリを退会した。
彼からの連絡はそれきり来ていない。それは安心でもあり、逆に不思議でもあった。
追いかけてこない事実に、少しだけほっとしながらも、いつか来るかもしれないという緊張が続いた。安心しきれない日常が、しばらく続いた。
今も帰り道に振り返る癖が抜けない。駅の改札を出るとき、ふと歩調を変える。カフェに入ると、無意識に後ろの席を確かめる。
何でもない日常の動作に、あの夜が残っている。慣れてきたと思っても、また振り返っている。人混みの中でふと後ろが気になる。
悪意ではなかったとしても、人の日常に無断で入り込む行為は怖い。それを「好き」の言葉で包まれると、余計に怖い。あの無邪気な笑顔が、今もたまに頭をよぎる。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














