夫「自分のことは自分でやる」と言うくせに食器は放置。だが、宣言通り別々にした結果
便利な口癖
三人家族の我が家で、夫がよく口にする言葉がある。
「自分のことは自分でやる」
結婚するとき「二人で協力して育てよう」と言ったのは夫のほうだ。
それがいつの間にか、家事も育児も私の役目になっていた。私は自分のことに加えて、子どものことも、家のこともやっている。一方の夫は、自分のことすら満足にできていなかった。
「ねえ、せめて使った食器くらい洗ってよ」
「だから、自分のことは自分でって」
その言葉が、彼にとっては便利な逃げ道だった。夜に食べた皿を流しに放り込んだまま寝て、翌朝そのまま出勤する。
私が洗わずにいると、翌日は新しい皿を出してきて、また放置する。え、と思っているうちに、流しの山だけが育っていった。
言葉をそっくり返す
毎日のイライラに耐えかねて、私はやり方を変えることにした。
彼の理屈を、そのまま受け入れてみたのだ。
「あなたの言う通りにするね。これからは本当に、お互い自分のことだけ」
「おう、それで頼むわ」
夫は満足げに頷いた。自分が何に同意したのか、まるで気づいていない顔だった。
その日から、私は自分と子どもの食器だけを洗った。
夫が流しに置いた皿は、一枚も触らない。たまっていく山を横目に、私は自分のきれいな器でご飯を食べた。
「皿、増えてきたな」
「それ、あなたの分。私のはもう洗ってあるよ」
夫は気にしていないふりをしていた。けれど、その山がどこまで伸びるか、彼自身も分かっていなかったのだと思う。
使う皿がなくなって
三日目の朝、ついにその時が来た。朝食をとろうとした夫が、戸棚の前で立ち尽くしている。
「待って、俺の茶碗が一個もないんだけど」
使える食器は、すべて流しの山の中だった。私は紅茶を一口飲んで、落ち着いて返した。
「自分のことは自分で、だよね。洗えば使えるよ」
夫は流しと私を交互に見て、口を開きかけ、そのまま閉じた。しばらく固まったあと、観念したように腕まくりをする。
「…これ全部、俺がやったのか」
生まれて初めてのように、自分で食器を洗いはじめた。山は高く、洗っても終わらない。そばで見ていた子どもが、目を丸くした。
「パパ、お手伝いしてるの?」
夫は決まり悪そうにうなずくしかなかった。最後の一枚を洗い終えて、彼は深いため息をついた。
「こんなに溜めてるなんて、自分でも気づいてなかった」
それからというもの、夫は使った食器をその場で洗うようになった。あれほどてこでも動かなかったのに、今では私より先に流しに立っている。
「いい口癖だったね、ほんと」
私が笑ってそう言うと、夫はばつが悪そうに頭をかいた。自分の言葉が、自分に返ってくる日が来るとは、思ってもみなかったらしい。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














