「あなたたちと、ランチ会したいの」まともに話したこともないのに距離を詰めてきたママ。今のちょうどいい距離を保った結果
送り迎えだけの間柄
保育園の送り迎えの時間は、私にとって短い立ち話のひとときでした。子ども同士が仲良しの保護者が、自然と数人集まります。
「昨日も一緒に帰りたがって、大変でした」
「気が合うんですねえ、うちの子も」
「見ていると、ほっこりしますよね」
「園庭で手をつないでいる姿、この前も見ましたよ」
子どもの様子を報告し合うだけの、気負わない時間でした。
連絡先は交換していても、やりとりするのは行事の予定くらいのものです。
役員をしているママが、その集まりに連絡係として加わっていました。行事の予定を回してくれる、頼りになる人です。
ただ、私はその人と個人的に話したことは、一度もありませんでした。すれ違えば会釈をする、それくらいの間柄だったのです。
一対一で届いた誘い
ある晩、その役員のママから、私にだけメッセージが届きました。グループ宛てではありません。
「あなたたちと、ランチ会したいの」
画面を見て、指が止まりました。
「見ていて、とっても楽しそうだから。私も入れてほしくて」
文面には絵文字が並び、いかにも親しげでした。
けれど、こちらには親しくなった覚えが、まるでないのです。
行事の連絡以外、言葉を交わした覚えがありません。それなのに、二人きりのメッセージで、いきなり距離を詰めてくる。
返信の画面を開いたまま、しばらく手が止まりました。ひやりとするものが、胸に残りました。
(あいさつ程度の相手が、どうしてここまで)
丁寧に、でもはっきりと
翌朝、私は返事を書きました。夜のうちは、どう返すのが正解なのか、決めきれませんでした。
勢いで断るより、頭が冷えた朝に、言葉を選びたかったのです。
「お誘いありがとうございます。私は園でお会いしたときに、お話しできれば十分なので」
「ぜひいつか」と社交辞令でにごすのは、やめました。
曖昧にすれば、また誘いが来る気がしたのです。丁寧に、でもはっきりと、送信ボタンを押しました。
送り迎えで顔を合わせた別のママも、同じことを口にしました。
「私にも、同じ内容が来ましたよ」
「園でご挨拶するくらいで、ってお返ししました」
誰も声を荒げていません。それぞれが、自分のちょうどいい距離を、静かに守っていました。
その朝から、個人的な誘いは届かなくなりました。行事の連絡だけは、これまで通りきちんと回ってきます。深く踏み込まない、ちょうどいい関係に戻ったのです。
送り迎えの挨拶は続いていきます。
丁寧に引いた一本の線が、私の毎日を軽くしてくれました。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














