「もう3回くらい見たんだよ」品を探す苛立つ客の一言。翌日、店長が売り場に加えたもの
何度も同じ通路を歩いていた男性
ドラッグストアで働いていたころのことです。
夕方の店内は仕事帰りのお客様で混み始め、私は通路で商品の補充をしていました。
しばらくすると、同じ男性が何度も売り場を行き来していることに気づきました。
スーツ姿の男性は棚を見上げたり、隣の通路をのぞいたりしています。
「何かお探しでしょうか」
声をかけると、男性は少し疲れたような表情で答えました。
「胃腸薬を探してるんだけど。この辺、もう3回くらい見たんだよ」
「申し訳ありません。ご案内します」
目的の商品は、一つ隣の棚の下段にありました。
男性を案内して商品を示すと、男性は箱を手に取ったものの、棚を見ながらため息をつきました。
「ここだったのか。もう少し分かりやすくできないの?」
声には苛立ちがにじんでいました。
私はすぐに頭を下げました。
「ご不便をおかけして申し訳ありません」
確かに、売り場に商品はあります。しかし、初めて来た方には場所が分かりづらいのかもしれません。
どう答えるべきか迷っていると、棚の向こうから店長がやってきました。
店長が受け取った「ひと言」
店長は男性の話を聞くと、棚を一度見上げました。
「ご不便をおかけしました。実は最近、同じ場所を尋ねられることが何度かありまして」
男性の表情が少し変わりました。
「やっぱり分かりづらいんじゃないの?」
「そうですね。こちらでも改善したほうがよさそうです」
店長は言い訳をせず、その場で棚の位置を確認しました。
「案内表示を付けられないか、今日確認します」
男性は少し驚いたようでしたが、やがて小さくうなずきました。
「そうしてもらえると助かるよ」
先ほどまでの強い口調は消えていました。
男性がレジへ向かったあと、店長は私に言いました。
「言い方は少しきつかったけど、探しづらかったというのは大事な意見だね」
私は改めて棚を見ました。
毎日働いている私たちにとっては当たり前の場所でも、お客様にはそうではありません。
翌日、胃腸薬のある通路が分かるよう、棚の上に簡単な案内表示が付けられました。
数日後、年配の女性から声をかけられました。
「この表示、分かりやすいですね。前はどこにあるか迷ったのよ」
その言葉を聞いたとき、あの日の男性を思い出しました。
強い言い方をされると、つい「クレーム」として身構えてしまいます。
けれど、その中に売り場を良くするヒントが隠れていることもあるのだと知った出来事でした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














