tend Editorial Team

2026.08.18(Tue)

「ここに止めて大丈夫ですよ」ベビーカーで乗った母親。最後まで声をかけられなかった私が後悔した瞬間

「ここに止めて大丈夫ですよ」ベビーカーで乗った母親。最後まで声をかけられなかった私が後悔した瞬間

乗り口でためらっていた親子

平日の夕方前、私はバスの窓側の席に座っていました。

停留所で扉が開くと、ベビーカーを押したお母さんが乗り口の前で少し立ち止まりました。車内の様子を確認しているようでした。

「ベビーカー、このままでも大丈夫でしょうか」

「大丈夫ですよ。ゆっくり乗ってください」

運転手がそう答えると、お母さんは何度も頭を下げながらベビーカーを押して乗ってきました。

車内は満員ではありませんでしたが、二人掛けの席にはそれぞれ一人ずつ座っているところが多く、まとまって空いている席はありません。

お母さんはベビーカーを邪魔になりにくい場所に止め、ストッパーをかけました。そして片手で持ち手を握ったまま立っていました。

眠そうな子どもは、ベビーカーの中で静かにしています。

私はその様子を見ながら、「席を替わったほうがいいかな」と思いました。

ただ、声をかけるタイミングを迷っているうちに、バスは発車してしまいました。

誰も何も言わないまま、停留所を過ぎていく

バスが揺れるたび、お母さんはベビーカーが動かないように持ち手を押さえていました。

すぐ近くの優先席には、杖を持った高齢の男性が座っています。その男性も座席を必要としているように見えました。

だから、その人が席を立たないことについて、私は何とも思いませんでした。

むしろ気になったのは、私自身を含め、そのほかの乗客が誰も声をかけなかったことです。

一人で二席を使っている人がいるわけでもありません。少し詰めたり、席を替わったりすれば、お母さんが座れる可能性はありました。

それでも車内には、何となく声を出しにくい空気がありました。

「ここ、座りますか」

その一言を言えばいいだけなのに、私は何度も考えては、結局言えませんでした。

お母さんも周囲を責めるような様子はなく、ただ揺れに合わせて体勢を整えながら立ち続けています。

降りていく背中を見て、ようやく後悔した

三つほど停留所を過ぎたところで、お母さんが降車ボタンを押しました。

バスが止まると、運転手はすぐには発車せず、親子が安全に降りられるよう待っていました。

「慌てなくて大丈夫ですよ」

その言葉に、お母さんは「ありがとうございます」と答えて、ゆっくりベビーカーを押して歩道へ降りていきました。

扉が閉まり、バスが再び走り出します。

私はそこで初めて、自分の隣の空いた部分を見ました。

あのとき少し体をずらして、「ここに座りますか」と聞いてみればよかった。

断られたとしても、それで困ることはありません。

それなのに私は、「誰かが声をかけるだろう」と思ったまま、最後まで何もしませんでした。

ベビーカーで移動している人を見かけると、今でもあの日のことを思い出します。

席を譲るべき人を探すよりも、まず自分にできることを考えればよかった。そんな小さな後悔が、今も残っています。

※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.10.05(Mon)

「えー、かわいい!これ着る!」買い物に失敗したと思った母。数年後、娘を見て笑った理由
tend Editorial Team

NEW 2026.10.05(Mon)

「昨日のは、なんていう曲?」隣のお風呂の歌声を気にしていた私。だが、ママ友の一言で固まった理由
tend Editorial Team

NEW 2026.10.05(Mon)

「Mなら余裕だよ」とサイズ表を見なかった私。だが、届いたジャケットを長男が着て分かった勘違い
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.04.23(Thu)

「共産党さん、ミサイルが大好きなので…」小泉進次郎大臣の皮肉に議場騒然。武器輸出解禁で賛否両論の嵐
tend Editorial Team

2026.04.22(Wed)

大谷翔平の二刀流登録に、元レッズGMが「不公平」と批判→「不公平では無いよ」「他のチームもやればいいじゃん」とネットで物...
tend Editorial Team

2026.09.12(Sat)

「私、聞きすぎてました?」家族や休日を何度も聞いてきた同僚。だが、私が本音を伝えた結果
tend Editorial Team