「身に覚えのない請求だ」父が放置していたカードの延滞。後日、延滞理由に気づいた息子の対応とは
郵便物にたまっていた同じ名前
実家に泊まった夜、居間の隅に郵便物がまとめて置いてありました。片づけようと手に取ると、同じ会社の名前が並んでいます。
「父さん、これ開けていい」
「ああ、なんだかよく分からん紙でな」
封を切ると、カードの利用明細と督促の知らせでした。同じ差出人から2通、いずれも支払期日を過ぎたという内容です。
「身に覚えのない請求だ」
父は本当に心当たりがない様子で、封筒を裏返したり、首をかしげたりしていました。作った本人がすっかり忘れてしまうくらい、あっけない一枚だったのでしょう。
眠った父の横で、明細を並べた
その夜、父が寝てから、私は台所の明かりだけをつけて明細を並べました。
日付をたどると、量販店で日用品を買ったときの少額の支払いが、そのまま残っています。
カードは作ったものの、引き落とす口座を登録していなかったのです。
それで支払いが滞り、督促へと変わっていました。
金額そのものは大きくありません。日用品の、ほんの数千円ずつの積み重ねでした。それが引き落とされる先を持たないまま、月をまたぐごとに督促という重い名前へ育っていったのです。
父を起こして問い詰めるより、先に流れを整えるほうが早いと思いました。
歳を重ねて、こういう手続きが分かりにくくなっていただけのことです。恥をかかせたくはありませんでした。
黙って書いて、黙って出した
翌朝、私はカード会社に電話を入れ、口座振替の書類を送ってもらいました。
「息子です。父の代わりに、引き落としの手続きを整えます」
書類が届くと、父には多くを言わず、通帳と印鑑だけ借りて欄を埋めました。
金額を書き写し、口座番号を確かめ、封をして、帰りに投函する。
それだけのことでした。やったのは、抜けていた一か所をつなぎ直しただけです。
特別な交渉も、難しい手続きもありません。ただ、父が気づかないうちに督促が積もっていく流れだけは、この手で確かに止められました。
後日、滞っていた分の請求が届きましたが、幸い延滞金は加算されていませんでした。ぎりぎりのところで間に合ったようです。
「もう、あの紙は来ないのか」
「来ないよ。口座から引かれるだけだから」
父は短くうなずいて、それきり何も言いませんでした。多くを語らないまま片づけて、正解だったと思います。父の背中に、余計な負い目を残さずに済んだのですから。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














