「12時を1分過ぎたらダメってこと?」生菓子の期限を何度も尋ねたお客様。だが、最後に笑った理由とは
「今日まで」の意味を、何度も聞かれた
洋菓子店で働いていたころ、閉店前に一人のお客様を接客したことがあります。
生菓子を箱に詰め、いつものように「本日中にお召し上がりください」とお伝えしました。すると、お客様は箱を見ながら聞き返されました。
「今日までってこと?」
「はい。本日中にお願いいたします」
そこで終わると思ったのですが、お客様はもう一度尋ねました。
「今日って、何時まで?」
私は少し迷い、「なるべく早めにお召し上がりいただくのが安心です」と答えました。
ところが、その言い方では納得できなかったようです。
「じゃあ夜の12時までは大丈夫なの?12時を1分過ぎたらダメってこと?」
そこでようやく、お客様が知りたいことが分かりました。「本日中」という言葉を、何時何分までなら大丈夫なのかという、はっきりした境界として確認したかったのです。
ただ、私にも「この時刻までは絶対に大丈夫」と言い切ることはできません。
少し考えてから、私は言いました。
「12時までなら大丈夫、という意味ではありません。お店からご案内できるのは、本日中に、できるだけ早くお召し上がりください、というところまでなんです」
曖昧に濁さなかったことで、話が終わった
言い終えてから、少し冷たく聞こえたかもしれないと思いました。
けれど、お客様はしばらく私の顔を見たあと、ふっと笑われました。
「ああ、そういう意味なのね。それなら分かった」
それまで何度も重ねていた質問が、そこで止まりました。
「早めに」「できれば」とやわらかく言えば親切だと思っていた私は、少し意外でした。相手によっては、曖昧な言葉を重ねるほど分かりにくくなることもあるのだと、そのとき初めて気づきました。
近くで袋を整理していた先輩にも、あとで事情を話しました。
「言えないことまで言い切らなくてよかったと思うよ」
その言葉を聞いて、私も少し安心しました。
それ以来、同じように細かく確認されたときは、無理に時刻を決めず、「店として案内できるのはここまでです」と分けて説明するようになりました。
何でもはっきりした数字で答えればいいわけではありません。決まっていないことを勝手に決めず、決まっている範囲をきちんと伝える。それも接客では大切なのだと、あのお客様とのやりとりで覚えました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














