「昼間なら自由だろ」何度伝えても続いた隣家の作業音。だが、少し変わったきっかけとは
その日、音は5時間続いた
静かな土地に住んでいる。
家と家のあいだに畑があって、車の音もほとんど届かない。
だからこそ、大きな音がすると、それだけがいつまでも耳に残る。
その日は朝から、隣の家でドラム缶を叩く鈍い音がしていた。
一定の間隔で何度も響き、しばらくすれば終わるだろうと思っていた。
台所の時計を見たのは九時前だった。ところが次に見上げたときには、もう二時を回っていた。
金属を切る機械の高い音まで重なった。
結局、作業の音はおよそ5時間続いた。
夕方、道で隣の人と顔を合わせた。普段なら会釈だけで通り過ぎるところだったが、その日は思い切って声をかけた。
「あの、今日かなり長く作業されてましたよね」
「昼間なら自由だろ」
「そうなんですけど、家の中までかなり響いていて…」
「夜にやってるわけじゃないし、自分の敷地だからな」
それ以上言っても話は平行線になりそうで、その日は引き下がった。
ところがその月のうちに、また朝から長く作業音が続く日があった。
夕方にもう一度、「前にもお話したんですけど、もう少し短い時間で終えてもらえると助かります」と伝えた。
相手は少し面倒そうな顔をした。
「だから、昼間なら自由だろ」
同じ言葉を返されたのは、これで二度目だった。
自治会が回した、一枚の紙
家に帰って母に話すと、「まあ、そういうものなんじゃない」と言われて終わった。
私も大ごとにしたいわけではなかった。
ただ、窓を閉めていても響く日が続くと、さすがにつらかった。
翌週、集会所の掃除当番で、自治会の役員をしている人と一緒になった。
ほうきを動かしながら、隣の家の作業音について話してみた。
「うちだけが気にしてるのかなと思ってたんですけど…」
「いや、去年も別の家から同じような話を聞いてますよ」
「時間について、何か決まりはあるんでしょうか」
「決まりというより、昔からの申し合わせはあります。今まで紙にはしてなかったんですけどね」
数日後、回覧板に一枚の紙が挟まっていた。
作業音を出す場合の時間帯や、遅くとも夕方には終えるという目安が書かれている。
紙は全戸を回り、隣の家にも渡った。
判が押されて戻ってきたが、うちに何かを言いに来ることはなかった。
次の週の夕方、外へ出ると、いつもより早い時間に音が止んでいた。
隣の人は納屋のシャッターを下ろしながら、こちらに気づくと短く言った。
「今日はここまでにしとくわ」
「ありがとうございます」
私もそれだけ返した。
完全に音がなくなったわけではない。それでも、朝から何時間も続く日は少なくなった。
直接言い合うだけでは変わらなかったことも、地域全体の申し合わせとして伝わると、少し受け止め方が変わることもあるのだと思った。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














