「俺が悪いって言うのか?」温泉旅館でぶつかってきた男性が逆ギレ。だが、困っていた私たちの前に現れた女性の指摘
夜の散歩道で、酔った男性とぶつかってしまい
今から5年前、妻と温泉旅館に泊まったときのことです。
自然に囲まれた広い敷地のある旅館で、温泉と夕食を楽しんだあと、私たちはライトアップされた散歩道を歩いていました。
少し先に、浴衣姿の男性が一人で歩いていました。
足元がおぼつかない様子で、左右にふらふらと揺れています。
「あの人、大丈夫かな」
妻が心配そうに言いました。
「酔ってるのかも。少し離れて通ろうか」
私たちは道の端に寄り、男性を追い越そうとしました。
ところが、ちょうど横を通る瞬間、男性が大きくこちらによろけ、私たちにぶつかってきたのです。
「あ、すみません」
とっさに謝りましたが、男性はこちらをにらみました。近づくと、お酒のにおいがしました。
「おい、どこ見てんだよ」
「すみません。でも、そちらが急に…」
私が説明しようとすると、男性はさらに声を荒らげました。
「なんだよ、俺が悪いって言うのか?」
男性は私たちの前に回り込み、通ろうとしても道を譲ってくれません。
妻が困った顔をしていると、今度は妻に向かって、ばかにするようなひどい言葉を言い始めました。
「やめてください。妻は何もしていません」
そう伝えても、男性は聞こうとしません。
妻は私の後ろに下がり、うつむいてしまいました。これ以上言い合っても仕方がないと思いながら、どうやってその場を離れようかと考えていました。
「あなた、いいかげんにして」駆け寄ってきた女性
そのとき、後ろから草履の足音が近づいてきました。
振り向くと、浴衣姿の年配の女性が駆け寄ってきて、男性の腕をつかみました。
「あなた、いいかげんにして」
女性の声に、男性は不満そうな顔で振り返りました。
「だって、この人たちがぶつかってきたんだよ」
「違うでしょ。後ろから見てたけど、あなたがよろけたんじゃない」
「いや、でもさ…」
「もういいから。迷惑かけてるでしょ」
男性は何か言いかけましたが、それ以上は言い返しませんでした。
少し離れた東屋にいた宿泊客たちも、こちらの様子を気にしているようでした。
女性は私たちに向き直り、頭を下げました。
「本当にすみません。奥さんにも嫌な思いをさせてしまって……」
「いえ、もう大丈夫です」
私が答えると、女性は男性の腕を軽く引きました。
「ほら、ちゃんと謝って」
男性はうつむき、少し間を置いてから小さな声で言いました。
「……すみませんでした」
女性はもう一度私たちに頭を下げ、男性を連れて旅館の建物へ戻っていきました。
あれほど強気だった男性が、女性に促されるままおとなしく歩いていく姿を見て、ようやく緊張が解けました。
翌朝、朝食会場に入ると、窓際の席に昨夜の男性が座っていました。
男性も私たちに気づいたようでしたが、すぐに目をそらし、何も言わずに食事を続けていました。
向かいに座っていた女性は、こちらを見ると静かに頭を下げました。妻も小さく会釈を返します。
席へ向かいながら、妻が私に小声で言いました。
「あの人、目を合わせなかったね」
「うん。昨日のこと、覚えてるのかもね」
妻は少し笑いました。
楽しいはずの旅行中に思いがけない出来事がありましたが、妻がいつもの表情に戻ってくれて、ほっとしました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














