「今日もお疲れさま。今、家ついた?」付き合ったばかりの彼から毎晩届く連絡。だが、私が連絡を無視したくなってきたワケ
画面を伏せて置く癖がついた夜
夜、湯舟に肩まで沈みながら、洗面所の棚に置いたスマートフォンを画面の方を下にして伏せておく。
いつの間にか、そんな癖が体に染みついていた。
40代になって付き合い始めた相手は、毎日仕事終わりに必ず電話をくれる人だった。
21時を少し過ぎた頃、湯気がのぼり始めた頃を見計らったように、決まって彼の名前が画面に浮かぶ。
「今日もお疲れさま。今、家ついた?」
付き合い始めて最初の数か月は、その声を聞くだけで一日の疲れが解けていく感じがあった。
けれど半年が過ぎ、一年が近づくにつれて、画面を伏せたまま少しの間そのままにしておきたい夜が、少しずつ増えていく。
嫌いになったわけではない。誠実で、約束を破らない人で、面倒なやり取りもない。
それは40代まで色んな人と関わってきた自分には、ちゃんと有り難いと分かる種類の優しさだ。
愛情はあるのに距離を取りたい
ある夜、繁忙期の終わりかけで体力をすっかり使い果たしていた。
シャワーも夕飯もまだで、髪が湿ったままソファに沈み込んでいる。スマートフォンが鳴り、いつもの名前が浮かんだ。
口の中で、思わず言葉がこぼれた。
「また明日電話するね」
けれど指は、結局いつも通り応答ボタンを押していた。
電話に出て、笑って、その日にあった出来事を交換し合う。
彼の側には、本当に何の問題もない。問題があるのは、いつだって自分の側だった。
仕事の付き合いも、家族とのやり取りも、年齢を重ねるにつれて少しずつ煮詰まり、夜の時間は誰にも何も話さずに過ごしたい日が確実に増えていた。
湯舟で何も考えずに天井を見上げていたい夜、本のページをめくるだけで終わらせたい夜。一人時間の手触りを、自分の体はもう覚えてしまっている。
(愛情がないわけじゃない、でも今夜は静かにしていたい)
その矛盾を彼にどう伝えればいいのか、答えはずっと見つからない。
連絡を減らしてほしいと頼むのは、彼の誠実さに対して失礼な気がする。だからといって今までと同じテンポを続ければ、自分の中の小さな倦怠感はどんどん膨らんでいく。
20代や30代の頃なら、毎晩の電話を100%嬉しいと言えただろうか。たぶん、無邪気にそう言えた。
今は違う。一人で過ごす夜が好きな自分も、彼の声を聞きたい自分も、両方が同時に存在している。どちらかを選び切れないまま、画面を伏せて置く癖だけが定着していく。
今夜も鳴るのは分かっている。出る前に、深く息を吸い直すのだろう。違和感とも倦怠感ともつかないこの感情に、当面、名前を付けないままでいるしかなさそうだ。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














