「預けた猫が和室の障子全部破いたって」弁償しようとした夫を責めた妻。だが、実母の一喝で妻の態度が一変
猫を預けた二泊三日のあと
結婚二十数年で初めて夫婦水入らずの温泉旅行に出かけた。
子どもが家を出てから企画した、二人だけの記念旅行だった。
心配だったのは年齢を重ねた飼い猫で、ペットホテルに長時間預けるのはかわいそうだった。
妻の実家に相談すると、義両親は「うちで二泊くらい構わないよ」と快く引き受けてくれた。
道中はずっと猫の話で盛り上がり、温泉宿でも電話で様子を聞いて笑い合った。
久しぶりに夫婦らしい時間だった。
旅行から戻った夜、妻がスマホを見て口元を曲げた。
「お母さんから連絡。預けた猫、和室の障子全部破いたって」
「修理代、払いに行こう」
週末に義実家へ伺うことになった。
妻は「お礼の菓子も買っていこう」と段取りを始めた。
義母の声色が変わった瞬間
当日、リビングで封筒を差し出した。
義母は両手を振った。
「いいのよ、こんなの紙一枚替えるだけだから」
受け取る素振りは一切ない。
横にいた妻が、急に身を乗り出した。
「ちゃんと弁償するのが普通でしょ。あなたも頭下げて」
追い打ちのように続けた。
「だから預ける前に言ったじゃない」。
私が黙ると、義母が湯呑みを置いた。
「謝るならあんたが謝りなさい」
場の空気が固まった。
義父までゆっくりと顔を上げる。
「猫を預けたいって言ったのもあんたでしょう。なんで全部この人の責任にするの。ずっと聞いてて気になってた」
妻は反論しようとして、声が出なかった。
膝の上で握りこぶしを作ったまま、しばらく動けなかった。義母は私に向き直り「この子の言い方、不快にさせたわよね」と頭を下げた。
娘を叱る母を見た夜
義母は最後まで封筒を受け取らず、襖の張り替えは自分たちでやると言って譲らなかった。
玄関で見送ってくれるとき、私の腕を軽く叩いて「うちの子がきつい言い方してごめんなさいね」と笑った。義父も「また連れておいで」と猫の話をしてくれた。
車を走らせて十分、妻が「お母さんにあんな顔されたの、二十年ぶりかも」と呟いた。
普段、私の前では絶対に折れない人だった。実家のリビングでは一切声を荒げない義母が、娘の言い分にだけ静かに釘を刺す。
実母の一喝で立場が一変する瞬間を、私は車のミラー越しに見てしまった。
夫婦の力関係が少しだけ変わった夜だった。週明け、妻が私の弁当箱を黙ってカバンに入れていたのは、たぶん何かの償いだった気がする。
あれ以来、妻は些細なことで私のせいにはしなくなった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














