「おい、紙!紙がないんだけど!」トイレで叫ぶ夫→トイレに仕掛けた妻の罠とは
せこい数センチ
結婚してからずっと、私には小さな不満があった。夫が、トイレットペーパーを決して替えないのだ。芯だけになっていても、平気で次の人に押しつける。
あるとき、たまりかねて文句を言った。
「使い切ったら替えてって、何回言わせるの」
「替えてるって。ほら、ちゃんと残ってるじゃん」
夫が指したのは、最後にほんの数センチだけ残った紙だった。これ見よがしに少しだけ残し、「まだ残ってる=替える担当じゃない」とアピールする。その日から、夫は意地でも空にしなくなった。困るのはいつも、次に入る私のほうだ。
「これ、わざとでしょ」
「使い切ってないんだから、俺の担当じゃないだろ」
悪びれもしない返事に、私の中で何かがぷつりと切れた。
自分の分だけ持ち歩く
言葉で通じないなら、状況で分からせるしかない。私は静かに作戦を立てた。
トイレに置いてあった替えのロールを、すべてこっそり別の場所へ移した。便器の脇に残したのは、例の「数センチ」一本きり。そして自分が用を足すときは、新しいロールをひとつ持ち込み、使い終えたら回収して持って出る。
こうしておけば、紙が尽きて困るのは夫だけになる。あとは、その瞬間を待つだけだった。
「ストックどこやった?」
「買った人に聞いてみたら」
そう返すと、夫は不思議そうな顔のまま黙った。自分が一度もストックを買っていないことに、まだ思い至っていないらしい。
トイレからの叫び
その朝、事件は起きた。トイレに入った夫が、ドアの内側から大声を上げたのだ。
「おい、紙!紙がないんだけど!」
私はキッチンから、平然と返した。
「あら大変。ストックもなかった?」
「ないんだよ!一本もない!これじゃ出られないだろ!」
ドアの向こうの声が、どんどん情けなくなっていく。私は手を止めず、落ち着いて言ってやった。
「自分で替えて、自分で買っておけば、こんなことにはならないの」
ぴたりと、声がやんだ。長い沈黙のあと、観念したつぶやきが返ってきた。
「……ごめん。分かったから、一本だけ持ってきてくれないか」
あれほど屁理屈をこねていた人とは思えない、しおらしさだった。私はロールをひとつ、ドアの隙間からそっと渡し、最後にひと言だけ添えた。
「次からは、よろしくね」
夫はドア越しに、小さく「はい」と答えた。次の日からは、何も言わずとも自分で紙を替え、ストックの数まで気にかけるようになった。名もなき家事を分かってもらうには、長い説教より、たった一度の荒療治が早かったようだ。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














